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歯車が狂い出したのは、翔太が3社目の大手企業から断りの電話を受けた頃だった。
その日は休日で、私も隣でその電話の様子を聞いていた。
翔太の暗い声から、不採用だという事はすぐに分かった。
翔「…ちょっと出てくんね」
電話を切った後、フラッと立ち上がった翔太はそのまま玄関を出て行った。
「うん…行ってらっしゃい」
私はもちろん改めて結果なんて聞く事はできず、翔太の後ろ姿を不安な気持ちで見送った。
お昼過ぎに出て行った翔太は、夜になっても帰って来なかった。
心配になって何度もメッセージを送り、何度も電話をかけた。
せめてもと、翔太の好きな料理を作って彼の帰りを今か今かと待っていたのに。
いよいよ日付けが変わりそう…という時間に、
カチャリと玄関の扉が開いた。
私は急いで玄関に駆け寄る。
すると、
翔「ただいま〜」
呑気に微笑む翔太がそこにいた。
「どこ行ってたの?連絡もつかないし、心配したんだからね!」
急な安心感から涙がポロポロと溢れ、翔太の胸を拳で軽く叩いた。
翔「…ごめんて。マジごめん…っ」
私の涙に動揺したのか、翔太が慌てて私を抱きしめた。
その瞬間、いつもの香水の香りに混じってアルコールとタバコの匂いがした。
「どこ…行ってたの?」
翔「いや、コンビニ行ったらたまたま高校の時の後輩に会って。で、そっからなんか話盛り上がっちゃって何人かで集まる事になって。んで、居酒屋で飲んでた」
「なんだ…それならそうと一言連絡してよ」
翔「ごめん。全然スマホ見てなくて」
それから翔太はチラッと食卓に視線を移す。
翔「飯…作ってくれてたんだね」
眉を下げ、本当に申し訳なさそうな表情で私を見る。
「うん。だけど、翔太が無事で良かった」
…本当に良かった。
自暴自棄になって、もしかして変な事考えてたらどうしようって…それが1番不安だったから。
翔「今度からもっとちゃんとマメにケータイ見ます」
「本当に。そうして下さい」
そんな約束をして、
ふふふって笑い合って、
触れるだけのキスをして、
今日も1日が終わった。
私は翔太が帰って来てくれた事がとにかく嬉しくて、
安堵する気持ちが強くて。
だからかな…
翔太が何かを吹っ切った事なんて、この時何も気付かなかったんだ。
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R(プロフ) - みかさん» 嬉しいですー!ありがとうございます🥺✨ (2022年8月31日 14時) (レス) id: 7b806d3bae (このIDを非表示/違反報告)
みか - あっという間に読んじゃいました🤣 (2022年8月30日 19時) (レス) id: d2e789e792 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - まりもさん» そんなそんな😳💦でも嬉しいです。読んで頂きありがとうございました🥺✨ (2022年8月27日 5時) (レス) id: 7b806d3bae (このIDを非表示/違反報告)
まりも - 話がちで神すぎません!?こんなに神作が作れるだなんて...尊敬してます!🤗 (2022年8月26日 10時) (レス) @page50 id: c571029d19 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - pupupupu8887さん» そんな風に言って頂けて私も幸せです🥺ありがとうございます!またお話が書けるよう頑張ります☺️ (2022年8月24日 20時) (レス) id: 7b806d3bae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:R | 作成日時:2022年8月12日 17時