＊ ページ28
俯きながらも所作の中で見える大きな手は当然だけど昔のままで、それだけでも涙がこぼれそうになるのを必死に堪える。
照「久しぶりだな、目黒」
照が先に沈黙を破った。
蓮「お久しぶりぶりっす…」
蓮がしばらく席に滞在してることで、周囲がざわめく様子がわかる。
だけど幸い、男性の照が一緒だったので非難の目というよりは好奇の目に近かった。
昔、蓮にファンクラブがあったように、今もなお彼が人気を博していることは確かだった。
照「お前、何でここにいるの？」
蓮「…」
少し圧が強めな照の質問に、蓮は黙っていた。
蓮「A…」
久しぶりに蓮から自分の名を呼ばれ、心臓が止まりそうになる。
顔は上げられないまま私は膝の上で固く握った拳をただ見つめていた。
蓮「A…」
するともう一回、さっきよりも弱々しく蓮が私を呼ぶ。
反射的に顔を上げた。
無視するなんて…できなかった。
4年ぶりに蓮と視線が交わる。
少し大人びたかな…
それに…痩せたね。
ゆらゆらと揺れる瞳に、吸い込まれるように私も目が離せない。
どうして…
どうしてそんな悲しくて、泣きそうな顔で私を見るの？
泣きたいのは…私なのに。
蓮「あの…」
蓮が何か言いかけた時、店の奥から「目黒くーん」と声がかかる。
蓮は難しい表情をしながら、私たちに一礼をして呼ばれた方へと去って行った。
美味しそうなパフェが目の前にあるというのに、先程までの食欲は一気に失われていた。
照「いただきまーす」
今のことに特に触れないまま、照がパフェを食べ始める。
照「うっま！Aも早く食った方がいいよ！」
勧められるまま、先端のアイスを一口頬張る。
「美味しい…」
照「…」
美味しくて幸せなはずなのに、喉の奥の方が苦しい。
甘いはずのチョコレートが、ほろ苦い味に変換されていくような、そんな感覚。
その後からスプーンは進まなかった。
照「寒い日のアイスって何でこんな美味く感じるんだろうな」
そう言って、他には何も言わず何も聞かずに、私のパフェを自分の方に引き寄せ、代わりに黙々と食べている。
照の優しさに、堪えた涙が頬を伝った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1855人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「渡辺翔太」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
R(プロフ) - ninaさん コメントありがとうございます！こちらの作品のコメントは久しぶりだったので嬉しかったです🥺✨一気読みなんて嬉しい限りです…😭今連載中のお話もどうか楽しんで頂けますように…🥺 (2022年2月3日 21時) (
レス) id: 7b806d3bae (このIDを非表示/違反報告)
nina(プロフ) - 最初から一気に読みました😭最高です！！🖤💛💙に愛される人生を歩みたいです（笑）次のお話も楽しく読ませていただきたいと思います！ありがとうございました✨✨✨ (2022年2月3日 15時) (レス) @page50 id: 3feab5f3eb (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - みかさん ありがとうございます😭✨今回も無事完走できました🥺💓 (2021年12月11日 12時) (レス) id: 7b806d3bae (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - みみみさん コメントありがとうございます😭✨わぁ〜嬉しいです😭💕また大大大好きと言ってもらえる作品を書けるように頑張ります☺️ (2021年12月11日 12時) (レス) id: 7b806d3bae (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - みさん コメントありがとうございます😭✨そんな事言って頂けて声を出して喜んでしまいました…😭続編構想中なので出来たらまた読みに来て下さると嬉しいです🥺💓 (2021年12月11日 12時) (レス) id: 7b806d3bae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：R
| 作成日時：2021年11月21日 15時
