出発の前に ページ32
翔「…我慢してない？」
「え？」
ふいに翔太くんが尋ねてくる。
翔「最近ずっと会えてなかったし、会えたとしても短い時間だし、明日からもしばらく離れるしさ」
「…平気だよ。いつもちゃんと気にかけてくれるし、本当にちょっと会えるだけでも私にとっては十分満足だから」
平気と言うのは…嘘。正直もっと連絡を求めてしまったり我慢する時だってある。
でもそれは言わないって決めたから。
少し会えるだけでも満足という本音は素直に伝えた。
翔「…Aはいつもワガママとか言わないで俺の予定に合わせてくれて、正直ありがたいし助かってる」
…やっぱり物分かり良い方が翔太くんも嬉しいんだね。
また少しチクリと胸が痛んだけれど、我慢してるって本音を言わなくて良かったと思った。
翔「ちょっと会えるだけで満足ってのは納得いかないけどね」
「え？」
すると翔太くんはキョロキョロと周囲を確認してから、店内の人に見えない位置に私の腕を引き、キスをした。
「…見られちゃうよ？」
翔「大丈夫、俺からはAしか見えない」
「…」
本当にサラッとすごいことを言う人だ。
そして熱の込もった目で私をじっと見つめると、そのまま深いキスをする。
「！！」
翔「…もっと口あけて」
「っ…」
耳元で色っぽく囁きながら舌を入れてくる。
今すぐにでも、私は膝から崩れ落ちそうだ。
それを察したように、翔太くんが私の腰に手を回しぐっと力を込めて引き寄せる。
「しょ、た、くん…んっ」
翔「しっ。声」
「…！」
ようやく解放されて、私はもう何がなんだかわからない。
きっと今、すごくひどい顔してる。
翔太くんは…
…え？
苦しそうな表情をしていた。
翔「…やべ。しなきゃ良かったな…」
「え…？」
翔「俺、よく今ここでやめられたなって思う」
「……」
翔「はぁぁあ」
そう言って両手で顔を隠しながらため息をついていた。
翔「お店ではもうダメだな」
そう言って上目遣いにチラッと私を睨むような顔をして、ぎゅっと抱きしめた。
「…もう…なんか、すごい、死んじゃうかと思った」
自分の破茶滅茶な語彙力に呆れるが、この時は本当にそんな感情だったから…
翔「こんなんで死んじゃったらその先シた時どうすんの」
そう言ってニヤッと笑う彼。
しばらく会えなくなるというのに、今日も私は彼に翻弄されっぱなしなのだった。
Fin.
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R(プロフ) - sakiさん コメントありがとうございます！初めてのコメント、とっても嬉しかったです！少しでもご期待に応えられるよう、楽しみながら緩やかに更新していきたいと思います！これからもどうぞよろしくお願いします！ (2021年8月1日 15時) (
レス) id: 7b806d3bae (このIDを非表示/違反報告)
saki(プロフ) - はじめまして！！翔太くんの話と気になり、一気読みしてしまいました！！翔太くんとヒロインちゃんの関係がとっても大好きで、文章もとっても読みやすいです！名古屋編のホテルでは2人のイチャイチャも見れるのかなと勝手に期待してます！更新頑張ってください！ (2021年7月31日 23時) (レス) id: f85547084c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：R
| 作成日時：2021年7月26日 11時
