千年のLove song (ページ2)

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サクラヒラリ（宮玉ver.）ページ2

Side：Tamamori

いつもの仕事帰り。帰り際、宮田が駆け寄って俺を呼んだ。

「玉～！これからお花見しない？」

いつも通りの急な宮田の誘い。こういう時、行って良かったためしがない。

「はぁ？お前いつも急すぎんだよ。それにお前と行くとたいてい時間の無駄で終わることが多いし。初日の出とかさ」

思い出すと急に疲労感が増してきた。

「そう言うなって～。やっぱ春の季節感じたいじゃん？」

「もう夜じゃん。今から行くの？」

時計を見ると、もう20時を回っていた。

「そ。夜桜。俺は玉と行きたいんだよ～。ね、行こうよ」

俺の周りにまとわりついてくる宮田は、まるで犬みたいだ。
俺、犬には弱いからな…。

「仕方ねーなー」

毎度毎度同じ会話をしている。こんな関係も、もう10年以上になる。

なんたかんだ言って、結局俺はいつも宮田と出掛けているんだ。

「やったー！じゃあ玉の車でね～！」

「ハイハイ。」

誘っておいて、俺が運転。まぁこれもいつものことだ。運転好きだからいいけど。

宮田の案内で、ライトアップされた夜桜を見に郊外まで出た。

まだ5分咲きの桜だったから、ほとんど桜を見に来ている人はいなくて、

人目を気にせず桜の周りを歩くことができた。

蕾をたくさん抱えて、少しずつ咲き始めた桜はなんだかとても可愛くて、思わず呟いた。

「宮田と出掛けた中で、一番マシなイベントかも」

「え～？もっとあるだろー？」

そう言いながら宮田も嬉しそうに笑った。

こうして宮田と肩を並べて、落ち着いて桜を見るなんて、デビュー前以来かもしれない。
桜を見上げる宮田の顔は、昔よりずっと大人びていた。

…普段は頼りなくて、情けない顔もいっぱいしてるけど。

「とーしくん！」

久しぶりにそんな風に呼んでみた。

宮田の手をキュッと握って。

「ん、どうしたの？甘えん坊の裕太くん」

いつもより目を細めて、ふわりと優しい笑顔で包んでくれる。

気分次第で振り回す俺なのに、宮田はいつでも優しい。
だから、安心して俺も甘えることができる。

「なんか、そんな気分」

肩を寄せて宮田に寄りかかる。

「うん」

俺の気分を敏感に察知して

何も言わず受け止めてくれる宮田が、俺はやっぱり好きで

たぶんこの先も、俺は宮田を許してしまう。

まだ冷たい春の夜風が、少しだけ熱くなった俺たちの頬を冷やしていく。

思わず広げた手のひらに

1枚だけ、小さな小さな花びらが落ちた。

―――サクラヒラリ(宮玉ver.)：End―――