昇る、微熱の太陽

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全部無かったことにしていたのと同じだよな、我ながら、あまりに酷すぎる。愚かでさえある。
少し冷静さを取り戻し始めた頭で思う。



「無かったことにしたかったわけじゃないんだ、

…なんなら本当は、思い出もあいつからのプレゼントも、勝手に部屋に置いていった物も、なにひとつ欠かさずに、抱きしめていたいくらい……なんだけど、」

「けど？」

「あいつと過ごした時間、ほとんど全部が幸せで、日常で、だから…どんどん色褪せていくのがわかる、から…」


どうせ、俺のこの腕をすり抜けていくなら…って、目を逸らしてしまうだけで。本当に、忘れたくなんか、


「それだけ、大切だったんだよ、みつにとって」

「…っ…たいせつ、だった…太輔が、なにより、」


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俺は、太輔と出会って太輔に惚れるまで、女の子が好きで、女の子と恋をして…それなりに経験だってあった。ちゃんと、恋をした。想っていた。

けれど、俺にとって何もかもが初めての相手だった太輔は、過去をあっさりと超えて、男とか女とかそんなものなんて気にならなくなるくらいに、俺を惹きつけた。付き合う前も、付き合ってからも。


人生で一番、恋、いや愛した人だった。



「死ぬまで一緒だって、覚悟もできてた」


俺以上に俺を知ってるのは太輔で、誰よりも俺を愛して大切にしてくれたのも太輔だった。そんな太輔と、人生を共に過ごしたかった。俺の、最後まで。最後に視界に映すのは、最後に触れるのは、あいつが…良かったんだ。たいすけが。




「…ひゃっぽ、いや一万歩譲って、さ、俺じゃない誰かと一緒にいたとしてもいいから…どこかで笑っててくんねーかなぁ…っ、」

「みつ…」



あいつを笑わせるの、本当は俺がいいんだけど、でもしょうがないから、いいよ。どこの誰といても、笑っててくれるなら。それがちゃんとした人なら。



「…っ、どうか…どうか今日もちゃんと起きて、笑って、食べて、寝ててほし…い…いきてて、ほしい……たのむから、」



そうじゃないと、そんな希望がないと、くるしいから。苦しすぎて、俺が生きていけないから…な？お願い、今日もちゃんと笑ってて？



「欲を言うなら、よこーさんみたいな人がいいなぁ、太輔のとなりにいんの」

「へ？」

「家事ができて、優しくて、しっかりしてて……まー、簡単に言うと、ちゃんとしてる人ってことよ！」



泣き過ぎた目は、腫れて痛いけれど、精一杯笑ってみせる。よこーさんも、そろそろ笑ってよ、





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