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09.手離し厳禁 ページ28

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［おはよう、今から家来れる？］





いつもと変わらない文面を

いつもと同じように送ったら、







［うん、30分ちょいくらいで行けると思う］







いつもと同じシンプルな返事が返ってきた。









「…くく、」









一回、やってみたかったこと。

ひろ騙されてくれるかな、









そう…今日は４月１日、エイプリルフール。






好きだとか嫌いだとか言って

騙し合う人も多い、よくわからない日。









なんか…急にやりたくなった、

どんな反応すんのかなって気になって。









あと…




もしかしたら、普段素直じゃないひろが

素直になってくれるんじゃないかなって

思ったってのもある。









だから、今日はひろに別れを告げてみる。

もちろん冗談で。









なんて言おうかな…なんて考えてたら

鳴ったインターホン。









いつもと同じように…

バレないように…









そう自分の心を落ち着かせて

ドアを開けた。









「よ、」


「いらっしゃい」


「おじゃましまーす」









花粉対策なのか、変装なのか、

どっちかはよくわからないけど

大きめのマスクをしたひろ。




…ひろの顔が小さいのか。









マスクの大きさが なんかすごくかわいくて、

ついついくだらない事を考えてしまう。









「今日、どしたの。急だったじゃん」


「急に呼び出してごめん、」


「いや？今日何も予定なかったし」


「そっか、なら良かった」









そー、んはは、



なんてかわいらしく笑うこの人に

今から残酷な嘘をつくのを、躊躇う。









でも…すぐ気付くだろうし…


よし、









「あのね、ちょっと大事な話があってさ。」


「ん、どうした？」


「あの…さ、別れよ……俺ら、」









すぐにツッコミが入るだろうと

思っていたのに、え、というひろの声を最後に、

部屋は静まり返った。









…お願い早く気付いて、

なんて、自分の意思で嘘をついたのに。









「え、と……理由、聞かして…っ、」


「……好きな人、出来て…」


「……そっか、」









そう言ったひろの声は震えていて

気付いていないんだと、気付いた。









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