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藤ヶ谷の髪をぐしゃぐしゃにして笑っていたら、腕を掴まれて、そのまま押し倒された。いつの間にか藤ヶ谷の目はギラついたオスの目になっていた。
あ…きっと今日は眠れない。ぼんやり思いながらギラついた恋人の目を見る。奥の方まで、じっと。そうしたら少し難しい顔をして時計を見てほんの少し表情を変えたから、不思議に思って服をきゅっと引っ張る。
「どーしたの」
「いや…今何時かなって」
「…なんで今?タイミングおかしくね?」
「ただ単純に時間見ただけじゃないよ」
「はい?」
「ゆっくりじっくり愛したいけど、時間によっては明日仕事だし我慢せざるを得ないでしょ?」
「っ、…で、結論は…」
「今が11時46分だから、まあ我慢しなくていいかなと」
「…ふうん」
我ながら、いい年した大人が…、って感じだけど、「ゆっくりじっくり愛したい」とか「我慢」とか直接的な表現じゃなく間接的にそういう雰囲気を匂わされると、どうしても顔を覆ってしまいたくなる。
恋愛経験ゼロではないし、そういう雰囲気だって何回も経験しているけど、…顔が熱い。
「いっぱい泣かせちゃったお詫びに、いっぱい愛させて」
「…かっ、勝手にすれば」
「北山がしたくないならいいんだよ?もう寝る?」
わざとらしく聞いてくるこいつは、お詫びをする気があるのかないのかよくわからない。なんなの。
そう思うけど、こいつにも俺がちゃんとお前のこと好きだって感じられるような言葉を与えてやらなきゃなって思って、「寝よっか」そうさっきよりもわざとらしく言いながら俺の上からいなくなって、いつもの場所に寝転がった藤ヶ谷の上に、今度は俺が乗ってみた。
「…きたやま?」
「愛してくれるんじゃないの」
「返事しなかったじゃん」
「はやく泣かせたお詫びして。…じゃないとまた泣くぞ、それでもいっ、」
それでもいいなら…、そう言おうとしたら、グルンっと体が回転して、あっという間にまた藤ヶ谷が上にいる。
「笑ってくれてるのが一番だけど、泣くなら俺の前で泣いて」
…急に真面目になんなよ、またうるっと来ちゃうじゃん。
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11:46 p.m. 甘すぎる恋人のせいで始まった夜。長く、アツい夜を終えると、俺は疲れ切っていて、声も掠れていたけど、「ごめんね」って抱きしめてくれる時、大好きな香りがするから幸せなんだ。
〜 main story 〜
fin.
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茉莉花(プロフ) - 充瑠さん» コメント、また、いつもお読み頂きありがとうございます。短編集ですね!かしこまりました、お気持ちを伝えてくださりありがとうございます…! (2018年3月12日 20時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
茉莉花(プロフ) - mさん» こんにちは、コメントありがとうございます。わっ…本当に思いつきで何気なく書いた作品が作者様の感性により、良いものに仕上げられているような、そんな感じがしています…素敵なコメント本当にありがとうございます。 (2018年3月9日 22時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
茉莉花(プロフ) - ゆうりんさん» はじめまして、私には勿体無いくらいのお言葉の数々…ありがとうございます。いつも書いている途中で悩んでしまう事があるのですが、こうしたお言葉を頂けると本当に嬉しいです…!また、シリーズ化も前向きに検討しておりますので待っていてください^^ (2018年3月5日 18時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
充瑠(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいていますが、コメントは初めてです。茉莉花さんのお話、繊細で大好きです!どちらかというと短編がちょこちょこいろいろなお話を読めて好きなので、こちらのシリーズ化も楽しみにしています!! (2018年3月5日 1時) (レス) id: 5cca4c3768 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - タイムリー式にする事でフィクションがこんなにもノンフィクションに感じたられて、より身近に2人の生活感や雰囲気を味わうことが出来る事に感動しました!!このシリーズの短編もかなり気になります!!茉莉花さんの世界へまた是非連れてって下さい!! (2018年3月4日 16時) (レス) id: 2ca24312b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉莉花 | 作成日時:2018年2月14日 17時