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「っ、絶対…手放さない…」








強く心に誓って、もう一度北山を腕の中に閉じ込めると「でも…」って言葉が聞こえて、嫌に心臓が跳ねる。









「どうして…別れる、とか…っ」


「…それ…は」


「…もしかして、やっぱり結婚して子供ほしく…」


「っ、ちが…っ」









「前にインタビューで言ってた事思い出して…」


「っえ…?」


「…家族が欲しい……23くらいで、結婚…して、若いパパになりたかったって…っ、もし…この仕事してなかったら……今頃は子供が二人くらいいたのかなって、」


「…っっ!」


「これ北山が話してたの俺と付き合ってからだったから、もしかしたら…って、勝手に思っちゃって」









話したら、今度は北山が話せないくらいに泣き始めちゃって。この話で、どうして北山がそんなに泣くのって…俺バカだからわからなくて、でも、そんな無神経なこと聞けなくて…ただ背中をさするしかできない。そんな自分が無力過ぎて、また、視界が滲んだ。









「ちっ…ちがっ…」


「え?」


「ちがう…っ」


「なにが…?」


「そういう意味で言ったんじゃ…ないっ」









俺の腕から逃げ出して、「…ばか…っばかばか…っ」って、俺の胸をポカポカ叩く北山の力は、普段のトレーニングからは考えられないほど弱くて、ちっとも痛くなんかないのに。

北山のこんな姿を見たら、どうしても心が痛くて、せっかくクリアになり始めていた視界がまた滲んで、涙が出そうになる。









「ふ…っふじがやと付き合い始めて、幸せすぎてっ…でも、もし俺がこの仕事してなくて…女性として生まれてきてたら…っ、藤ヶ谷の大好きな子供授かれたのにって……っ」


「…っ、きたやま…!」









北山のこの言葉で、やっとすべてが見えた気がした。

俺は、やっぱり女の人と結婚して子供を授かりたいって思ったんだとばかり勘違いしていて、だから、北山は俺と別れたいんだとばかり…。けど、違ったんだ。北山は…俺とそうなりたいんだと願っていた。


だから…別れなきゃ、なんて俺が渉に漏らしていた事実を知って、悲しかったし、許せなかったんだ。









「…なんで俺たちってこんなに不器用なんだろうね」



左手で、まだ微かに俺の胸を叩く北山の手を掴み、右手で北山の顎を持ち上げて、キスをした。触れるかどうかの、子供みたいな、キス。

それでも、今の俺達には十分だった。

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茉莉花(プロフ) - 充瑠さん» コメント、また、いつもお読み頂きありがとうございます。短編集ですね!かしこまりました、お気持ちを伝えてくださりありがとうございます…! (2018年3月12日 20時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
茉莉花(プロフ) - mさん» こんにちは、コメントありがとうございます。わっ…本当に思いつきで何気なく書いた作品が作者様の感性により、良いものに仕上げられているような、そんな感じがしています…素敵なコメント本当にありがとうございます。 (2018年3月9日 22時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
茉莉花(プロフ) - ゆうりんさん» はじめまして、私には勿体無いくらいのお言葉の数々…ありがとうございます。いつも書いている途中で悩んでしまう事があるのですが、こうしたお言葉を頂けると本当に嬉しいです…!また、シリーズ化も前向きに検討しておりますので待っていてください^^ (2018年3月5日 18時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
充瑠(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいていますが、コメントは初めてです。茉莉花さんのお話、繊細で大好きです!どちらかというと短編がちょこちょこいろいろなお話を読めて好きなので、こちらのシリーズ化も楽しみにしています!! (2018年3月5日 1時) (レス) id: 5cca4c3768 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - タイムリー式にする事でフィクションがこんなにもノンフィクションに感じたられて、より身近に2人の生活感や雰囲気を味わうことが出来る事に感動しました!!このシリーズの短編もかなり気になります!!茉莉花さんの世界へまた是非連れてって下さい!! (2018年3月4日 16時) (レス) id: 2ca24312b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:茉莉花 | 作成日時:2018年2月14日 17時

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