11:46 p.m. あますぎるキミのせいで

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「…急かなきゃ」


「え？」


「…無理矢理にでもついてこさせなきゃ、離れてくだろ…おまえ、」


「は…？」









北山の肩を持って、ぐいっとこっちに向かせればさっきまで笑っていたはずの北山は、目に涙を溜めて眉を下げていた。









「なに…いってんの」


「……おまえは、なに考えてんだよ」


「なにって、」


「別れなきゃ、とか意味わかんねーこと言ったんだろ、横尾さんに」


「な…んで知ってんの、それ」


「よこーさん、声かけてくれたんだよ。みつ大丈夫かって」









そのことを初めて聞いた俺は、
もう何も言えなくなった恋人のパーカーの裾を握って、「恋人の大親友からそんなこと聞かされて、大丈夫なわけねー…」そう、涙声で言う北山を抱きしめることすら出来なくて。

自分の頬を伝う涙にも気付かず、ただ立ち尽くすしか出来なかった。









「…おれ、最初に言ったよ、」




「結婚なんてできなくていいし、子供だっていらない、もうその覚悟はできてるって。……ふじがやといられれば…それでいいって…っ！」









覚えてる、覚えてるよ。…忘れるわけない。あの言葉が、どれだけ嬉しかったか…。









「っ、」






北山が真っ直ぐな瞳で言ってくれたあの日のことを思い出したら、涙が止まらなくなって。情けない気持ちでいっぱいになって…そこでやっと、何もかも自分が悪かったことに気がついた。

それなのに、涙ばかりが溢れて「ごめん」って言葉が言えなくて…俺のパーカーの裾をぎゅっと握る北山の体を強く、今までにないくらい強く抱きしめた。









「……かなえてくれるって、いった」


「ごめ…っ」


「それは何のごめん？」









口調はしっかりとしているけど、顔は涙でびしょびしょで、泣いているせいで呼吸だって不規則だし、心だって、痛いはずなのに。ボロボロな状態なのに。北山は俺と向き合ってくれて……

どうして、俺はこんな人を手放そうと…？









「……勝手に離れようとして、ごめん。もう離れようとなんてしないから…もう一度俺にチャンスくれないかな、」









抱きしめていた北山の体を離して、目を見て言った。涙でゆらゆら揺れている北山の目は、今まで見たことないくらいに悲しそうで、苦しそうで。
…もうそんな目させないから…馬鹿な俺にもう一度チャンスをくれませんか。









「…っ、そんな簡単に手放されてたまるかよ、」

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