【HQ】可愛すぎ 〜その顔、他の男に見せんなよ〜

松川 一静 ページ2

｢松川ー、ちょっと手伝ってくんねー？｣

｢おう、今行く｣


文化祭近いせいか各クラス人手を呼ぶ声や生徒の元気な声が響く。
もちろん私のクラスもそうだ。


｢ごめん、すぐ戻る｣

｢わかった｣


あまり口数の多くない私は一静と話す言葉も少ない。
そのせいで周りにはあまり好かれていないだろう。
だから一静に好きだ、と言われた時はドッキリか何かだと思っていた。


｢あ、Aちゃん｣

｢どうかした？｣

｢いや、ね…言いにくいんだけど…松川くんが…｣


次の言葉を聞いた時、私はやっぱり嘘なんだ、と思った。

｢何組かはわかんないんだけどさっき、綺麗な子と歩いていたの見たんだけど…｣

嘘だったんだね。
…これ程までに悲しかったことはないだろう。
そう思うまでに私は一静のことが好きになってしまっていた。

教室で泣くわけにもいかずに私は教室を飛び出した。
ぼやける視界の中、走り続ける。
止まることを知らない涙が止めどなく溢れて来る。


｢わっ…！｣


曲がり角で誰かに思いっきりぶつかった。
反動で尻餅をつきそうになったけれど、ぶつかった人に腕を引かれ、踏み止まった。


｢ごめんなさい！｣

｢待てA！｣


泣いているのがバレないように、と俯きながら謝ったが涙声でバレバレだ。
また走り出そうとしたけれど今度は強い力で抱きしめられた。


｢一静…？｣

｢うん。何で泣いてるの｣

｢だって…｣


さっきの言葉が頭をよぎる。
今だって本当は嘘でやってることかもしれない。
信じたくても信じきれない自分がいる。


｢一静が…他の子と歩いてたって…聞いて…私…本当は好きじゃなかったのかな…って…｣

｢…違う。俺が好きなのはAだけ。俺のこと信じられる？｣


私、一静のこと…信じてなかっただけなんだ。
勝手に勘違いして泣いて、迷惑かけてばっかりなのに…。


｢ごめん…一静｣

｢いいよ。…んー、でも1つ許せないな｣


唸るような声を上げて言った。
やっぱり怒られるだろうか。


｢そんな顔でここまで走ってきたんでしょ？
Aの笑ってる顔も泣き顔も全部俺のなんだけど｣


そこが許せないな、と私の涙を拭いながら言った。


｢今回は許すけど、これからはは俺だけに見せてよね｣


私はその言葉に黙って頷くしかなかった。


〜後日談〜

｢及川のせいで彼女に嫌われかけたんだけどどうしてくれんだよ｣

｢え！？俺のせい！？っていうかそんなに可愛かったかなー？｣

及川のクラスは女装喫茶であった。

花巻 貴大→←及川 徹

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