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目が覚めてまず感じたのは、見慣れない場所にいる驚きじゃなかった。それよりも、ほのかに香る草と土、それから、木の匂い。
「うぅっ......」
布団から起き上がるとひどいめまいがして、思わず呻き声が出た。枕元には布巾のかかった桶があり、誰かが私を看病してくれた跡がある。じっとめまいが収まるのを待ってから、玄関をくぐって外に出た。私はいつの間にか服が着替えさせられていたことや、はだしのまま外に出てしまったことにも気がついたけれど、まったく気にならなかった。なぜなら、外には信じられない光景が広がっていたからだ。
馬に騎乗した若者が正面の道路を通りすぎ、反対の方向からは二人組の着物姿と思われる女性達が笑いあいながら歩いてくる。道を歩く全員が、時代錯誤とも思える服を着ていた。髪型もそうだ。私はショックで全身が震えた。
まったく何もかもが変わってしまっている。夢だと思いたかった。でも夢じゃない。ここは、本当にどこなんだろう。見たところ全然私が住み慣れたアメリカじゃないし、家のバルコニーから遠くに見えた連なる山々は影も形もない。私のお気に入りのふかふかとした芝生は、でこぼこした黄土色の土になってしまっている。
そうだ、家は?そこまで考えて、私は再び全身が震える思いをした。足下から、がらがらと地面が崩れ、心もとなく体だけが浮いている心地だった。そう、私の家は炎に包まれて、その中でブランチをしていたパパとママは崩れる屋根の下敷きに...............
胸がひどく苦しい。呼吸がうまくできず、喉の、肺の奥からヒューヒューと息が漏れる音がする。胸を押さえて私は今度こそ膝から崩れ落ちた。
そのとき、息苦しさで滲んだ涙でぼやけた視界の端に、若い男性が慌てたようにこちらに駆けてくる様子が見えた。そして彼は私の背中を擦りながら、ゆっくり、ゆっくり息をするんだ、と優しく声を掛けた。いつの間にいたのか、10歳ぐらいの男の子も男性と同じようにしながら、私を心配そうに覗き込んでいる。
その背中に触れる二人の手に安心しながら、私は呼吸が正常になっていくのを感じるとともに、また気を失ったのだった。
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作者名:らいらん | 作成日時:2018年6月8日 22時