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『…うん、好きな人いるよ。』
そう言ったA。
正直横尾と佐藤の言葉は信じてなかった。
いや、信じたくなかった。
でもやっぱり本当らしいな。
「ま、マジか…。」
俺は言葉が出なかった。
『光、は？』
少し硬い表情でAが首を傾げた。
そんな姿にも胸がグッとする。
「お…俺もいる。」
この気持ちを伝えてもいいのか…？
俺は…どうしたらいいんだ？
Aとの間に少し気まずい空気が流れた。
『もうすぐ、花火の時間だね。…先輩たちと合流しよ？』
「お、おぉ。」
俺たちはゴミを集めて先輩たちのもとに向かった。
その間、俺は自分の鼓動しか聞こえなかった。
『八尋先輩！』
「Aちゃん、光くん！」
私は八尋先輩と花子さんに向かって声をかけた。
それに気がついた八尋先輩が手を振ってくれている。
「もうすぐ始まるよ。行こっか。」
花子さんの言葉に私たちは足を進めた。
「あ、ゴミ捨てに行ってきていいっすか？先輩たちのゴミも貰います！」
「え、いいの？大丈夫？」
『私も着いていきますよ。』
八尋先輩はすこし躊躇っていたけど、いい場所取ってくださいとお願いすると、任せて！と張り切っていた。
私と光はまた2人だけになった。
自分の心臓の音がうるさい。
それからゴミを捨て終え、戻ろうとした時。
＿＿＿＿ドン…ドォン…
『あ、花火！』
「戻る前に始まっちまったな…。」
戻ろうにも怪異が多すぎて1歩も動けない。
「おいA！危ねぇぞ。」
『あ、ありがとう光…』
後ろにたくさんの怪異に気がついた光が私の腕を引いてくれた。
「手…繋いでもいいか？」
『え…うん、お願い…』
私と光の手が重なり合う。
私、手汗大丈夫かな…？
……このドキドキ、伝わってないよね…？
光に聞こえそうなほどうるさい心臓。
落ち着いて欲しいけど、ずっとこのままがいいと思う自分がいるのに驚いた。
私は隣を歩く光の顔を見れなかった。
「…ここなら静かに見えるな。」
『うん、結構穴場感あるね。』
祭りの端の方。
俺とAは空一面に広がる花火を見あげていた。
周りには1匹も怪異は見えない。
ここにいるのは俺とAだけ。
そう考えると花火どころじゃなかった。
心臓の鼓動は花火よりも大きい音を鳴らしている。
そしてAの柔らかい手。
それを思い出すだけでドキドキする…。
俺はこの気持ちを抑え込めなくなった。
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作者名：ななサマ | 作成日時：2024年3月15日 21時
