▼先手必勝は基本 ページ6
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「____俺は君が好きだよ、A嬢」
ようやく吐き出せた台詞に胸のすくような思いで心が満ちる。
この前振り無しの告白に、A嬢は情報の処理が出来ていないようだった。
『な、好きって』
「俺がA嬢を好きなんは変?」
彼女が呆然としている隙に徐々に距離を詰める、狼狽えた動きを見せるその柔い両手をそっと手に取った。
仲間が戦場で戦っているのに不謹慎?卑怯?
普通の奴から見たらそうかも知れん。けど俺らは《我々国の幹部》。俺らなんぞ基本内ゲバ集団やで?
『っ…オスマン様、何を』
「俺も一応バカとちゃうから。今、婚約しよっかって言うたら応えてくれへんのは分かっとる」
『……申し訳ありません』
彼女が婚約者探しにそこまで乗り気でないのは初端から分かりきっていた。
元より自分から積極的に人に関わりにいくタイプでもないのだろう。
それでも、俺はA嬢が欲しいと思ったから。
空虚な瞳の「初めまして」の時のから、時間が経てば経つほど彼女は予想外な方にばかり進む。
立場を弁えてか常に腰が低いのに、何故だか一筋縄ではいかない海の国の王女様。
捕まらないもの程惹かれていくのは男の性かもしれない、どうしてもあの笑顔を自分の隣に置きたいのだ。
「今すぐ応えてくれとは言わへんよ」
『あ……っ』
「ただ、これだけは覚えておいて」
握りっぱなしだって手を自分の方に引いて彼女の華奢な身体を腕の中に収める。
箱庭に閉じ込められたばかりに男慣れしていないA嬢は、頬を真っ赤にして俺の視線から逃れるように目を伏せた。
「目ぇ逸さんで聞いてや」
『は、い』
瞼を上げさせる為、涙袋のあたりを親指の腹でそっと撫でる。
すると彼女はビクリと肩を跳ねさせて、その美しいアメジストをゆっくりと覗かせた。
俺は手を彼女のきめ細やかな肌の上で移動させ、赤らんだ頬を挟んで顔を強制的に逸らせないようにした。
「誰と婚約するのか、誰ともしないのかはA嬢の自由。
でも、此処に君が欲しい男もいるのを忘れないでね」
『オスマン様、……んっ!?』
まともに抵抗しないのが悪いと、心の中で最低な言い訳をして俺はその小さな唇にそっと口付けた。
逃げ場のない彼女は少し色気の無い声を上げて放心してしまった。
「じゃあ、考えておいてな」
おまけにオデコにもチュッとして、その場を離れる。
今の彼女には考える時間が必要だろう。
「お前もそう思うやんなぁ、チーノ」
「……チッ」
ラッキーゲーム
hoi
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奥山乃愛(プロフ) - niさんやsnさんにも愛されたいです(恋愛的に)無理せずに頑張ってくださいね! (2022年11月2日 16時) (レス) id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - モモさん» お祝いのコメント感謝申し上げます。途中更新期間が空いてしまい申し訳ありませんでした。ご期待に添えたものであれば幸いです、これからも是非にお付き合いくださいませ。 (2019年11月30日 23時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
モモ(プロフ) - 続編おめでとうございます。リクエストの小説も楽しく読ませて頂きました。ありがとうございますm(_ _)m相変わらず言葉の言い回しが美しく素晴らしい作品だなぁと改めて思いました。冬は何かと忙しい時期になると思いますが、無理をしない程度に頑張って下さい(*^^*) (2019年11月28日 12時) (レス) id: 9f311d580c (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 猫夢さん» こんばんは、好きの一言が何より嬉しいので無問題です…。ありがとうございます。 (2019年11月24日 19時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
猫夢(プロフ) - 語彙力がないけど言いたいので失礼致します。好きです... (2019年11月21日 13時) (レス) id: e485f856c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あん肝ポン酢丸 | 作成日時:2019年9月22日 15時