▽守りたいから ページ19
・
鬱蒼と木々の生い茂る小道を抜けると、サークル状にひらけた場所に出た。
再びひとらんらん様の手を借りてゆっくりと外道丸から降りる、夜の森は風に揺られる葉の音が僅かにするばかりだ。
『ここだけまるで舞台のようですね』
「そうか？考えた事もなかった」
うーん、これ恥ずかしいこと言ったな。
でも実際、一箇所だけ月明かりの差すここはスポットライトが当たるステージのように思えた。
「まぁ、気分転換になったならいいんだけど」
『……気を遣わせてしまいましたね』
「俺が勝手にしたかっただけだよ」
私の精神状態が不安定なのに気付いて態々連れ出してくれたのなら申し訳ない。
そう思って愛馬を撫でる彼を伺い見れば、彼は怒るでも呆れるでもなく当たり前だとでも言わんばかりに言を発した。
「Aがアイツらの好意に困ってるのは見てればわかった」
『申し訳、ないです。本当に……』
「え？」
『え？』
私は仲間が粗雑に対応されている事への苦言も覚悟の上だった、彼はとても仲間想いの人だから。
しかし、意を決して頭を下げれば存外拍子抜けな声が返ってくる。
「いや、それはオスマン達が悪いだろ。あんだけしつこく絡まれたら困りもするわ」
『えっと……』
「挙句に人の事いい人ポジとか言いやがるし」
絡まれて困るのも事実だが、それ以外に個人的な要因があるのとは言えず。
肯定でも否定でもない相槌をすると、彼はポソリと何かを呟いたが葉の揺れる音でよく聞き取れなかった。
「＿＿ま、とやかく言う俺だってAの事が好きな男の1人なわけなんだけど」
どこか嘲笑するような、困ったような笑い方をした彼はその表情とは裏腹に迷いのない濡羽色の瞳で私を見据えた。
どうしようと私が強張る事など分かっているようで、ひとらんらん様は無理に距離を詰めるでもなく穏やかな声で紡いだ。
「俺を好きになってほしい……も、当然あるけど何よりも俺はAを一番に守れる男になりたい」
『ひとらんらん様、私……まだ』
「いいよ、待つから。Aの答えが出るまでは他の奴と同じように傍にいさせて？」
『勿体ないお言葉です……』
はにかんだ笑顔に安心して、告白というシーンでありながら私は心穏やかであった。
考えるべき事はまだまだあるけど、今だけは彼の好意を素直に甘受しようと思う。
目を細めた彼はマスクをズラすと、忠誠を誓う騎士の如く私の指先に短く唇を当てた。
「うん。Aはそうやって笑っててくれ」
ラッキーゲーム
hoi
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1295人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奥山乃愛(プロフ) - niさんやsnさんにも愛されたいです（恋愛的に）無理せずに頑張ってくださいね！ (2022年11月2日 16時) (
レス) id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - モモさん» お祝いのコメント感謝申し上げます。途中更新期間が空いてしまい申し訳ありませんでした。ご期待に添えたものであれば幸いです、これからも是非にお付き合いくださいませ。 (2019年11月30日 23時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
モモ(プロフ) - 続編おめでとうございます。リクエストの小説も楽しく読ませて頂きました。ありがとうございますm(_ _)m相変わらず言葉の言い回しが美しく素晴らしい作品だなぁと改めて思いました。冬は何かと忙しい時期になると思いますが、無理をしない程度に頑張って下さい(*^^*) (2019年11月28日 12時) (レス) id: 9f311d580c (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 猫夢さん» こんばんは、好きの一言が何より嬉しいので無問題です…。ありがとうございます。 (2019年11月24日 19時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
猫夢(プロフ) - 語彙力がないけど言いたいので失礼致します。好きです... (2019年11月21日 13時) (レス) id: e485f856c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年9月22日 15時
