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「8歳のお誕生日おめでとう。
今年のお誕生日ケーキは、頭が良くなるレシチンたっぷりの大豆粉とナッツの低糖質ケーキよ」
「ありがとう、ママ。
でも、あのね、ボク……」
これは、誰かの夢?
大きな家に住む二人を、私は少し離れた所で見ている。
でも、二人は私なんか居ないような態度。
「…………一度でいいから真っ赤な苺が沢山乗ったタルトが食べてみたいな………」
赤毛の少年は俯きながら、目をキラキラと輝かせて言った。
子供ながらに母を思いながらも、遠慮がちに言ってみた小さな我儘だった。
“一度でいいから"という言葉が少し引っかかるけど、何よりあの少年が可愛くてニコニコしてしまう。
「まぁ、なんて事を言うの!
あんな砂糖の塊みたいなお菓子、毒みたいなものよ。
1切れで一日分の糖質の理想摂取量をオーバーするわ。
さぁ、今日はドコサヘキサエン酸とイコサペンタエン酸がたっぷりのヘルシーなマグロのソテーよ」
その子はまだカロリーを気にするべき歳では無いだろう。
いっぱい食べていっぱい動いていっぱい学ぶ。
それが子供のするべき事だ。
早口で捲し立てるように自分を押し付ける母親が、酷く醜く見える。
「ああ、でも8歳児の理想のカロリー摂取量は一食600kcal以内だから……100g以上食べ過ぎないで。
いいわね」
「………………はい。ママ」
彼女の顔面に膝蹴りでも食らわせてやりたい所だが恐らく其れは叶わない。
俯く子供を見て心が痛くなった。
寂しそうで、苦しそうだ。
【ボクは、ずっと真っ赤な苺のタルトが食べてみたかった】
【たまに通りかかるケーキ屋さんのショーウィンドウに飾ってある、宝石みたいなタルト】
『っ!?』
少年の近くに立って行き場の無い手をさ迷わせている私の隣に、赤毛の彼が立っていた。
何かを思い出す様に、呟くように語っている。
あぁ、多分そうなんだな。
この少年は、少年はリドル君なのだろう。
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夏美(プロフ) - レオナの嫁さん» ありがとうこざいます!!(号泣) (2022年10月12日 6時) (レス) id: 585ae669d5 (このIDを非表示/違反報告)
レオナの嫁(プロフ) - 受験生は忙しいですよね💦ゆっくり更新していってくださいね。待ってます😁 (2022年10月11日 22時) (レス) @page23 id: 5c31e1afd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏実 | 作成日時:2022年5月16日 16時