検索窓
今日:9 hit、昨日:2 hit、合計:81,710 hit

38話 ページ38

疑問に思ったけど、追求はしないでおく。特に深い意味はない。


「へぇ。てっきりパシられてるのかと」


「美術部、そんな怖い先輩いないよ」


 口を動かしながら、ゴミを分別されているか確認して大きなゴミ箱へと捨てる。
燃える、燃えない。燃えないゴミは消しカスだらけだった。
 ゴミを捨てている今は、晴に背を向けている。
だから笑顔を浮かべる必要はないのに。自然と笑みが溢れていた。


「案外、裏があるかも」


「怖いこと言うなよ」


ゴミ箱の蓋を閉めて振り返ると、笑っている晴と目が合った。
ビックリした。だって、晴がずっと私のことを見ていたような、体勢だったから。

 私は、背を向けていたけど。
晴は、私のことを見てくれていた。


 ……なんで今そうやって思ってしまったのか、分からないけど。
何が私のストッパーを外したのか、分からないけど。


私を。

今だけじゃなくて。


ずっと、私だけを、見てほしいって思った。


 あの日から。一緒に遊んだ、あの秋の日から感じてはいた。
でも、この考えに至ったら。私達の関係は終わってしまいそうで。
思考を止めていた。

でも。

 私、やっぱり晴のこと凄く好きだ。
晴のこと諦められない。
このまま、素直に引き下がるなんて。引き下がれる訳がない。
大人しく身なんて、引けない。
 想いを伝えず、晴と他の人が幸せになる姿なんて。見たくない。

見るなら__行動してからじゃないと、嫌だ。

 逃げるようにゴミ捨て場から離れて、部室ではなく、麻奈ちゃんの待つ玄関へと足を運ぶ。
今すぐに言いたくて。

 ゴミ袋を片手に持ったまま、玄関の扉を開ける。
廊下よりも冷えた空気が広がっていた。
 驚いている麻奈ちゃんの言葉に被せるよう、真っ直ぐに言う。


「麻奈ちゃん。
私、告白するよ。晴に」


麻奈ちゃんは目を見開いた。
けれど、すぐにその目は細くなり、優しげな瞳へと変化する。


「うん。頑張れ」


_ _ _ _


「……やっと言う気になった、かぁ」


 閉めきられた部屋のなかで、冷たい空気が震える。
そこにいるのは、確かに先程告白を決心した彼女の友人で。
 頼りない薄暗い電灯が、その友人の笑顔を照らしていた。


「どう考えても両想いだよ、アンタ達」

39話→←37話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (76 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
92人がお気に入り
設定タグ:名前変換オリジナル , 中学生   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

フルーツちょこ(プロフ) - コノハ【心葉】さん» ありがとうございます。本日全話修正をして誤字脱字や、文章の訂正をしましたので、もう一度読んでくださると嬉しいです。 (2018年11月30日 19時) (レス) id: fddb009284 (このIDを非表示/違反報告)
コノハ【心葉】 - 楽しみです! (2018年11月30日 18時) (レス) id: 17d56b6dae (このIDを非表示/違反報告)
フルーツちょこ(プロフ) - 水瀬さん» 楽しみと言っていただけてありがとうございます。私も更新頑張りますので、これからの物語もどうぞお楽しみに下さい。 (2018年10月23日 15時) (レス) id: fddb009284 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬(プロフ) - お話とても面白いです!続きもすごく楽しみになりました!更新頑張ってくださいね! (2018年10月20日 16時) (レス) id: db4b643399 (このIDを非表示/違反報告)
フルーツちょこ(プロフ) - 抹茶モナカさん» 応援のメッセージありがとうございます。最近学業が忙しいため、更新をあまり出来ていませんが、近いうちにもう一話更新したいと思います。コメントありがとうございました。 (2018年10月12日 15時) (レス) id: fddb009284 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みくるみちょこ | 作成日時:2018年6月3日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。