38話 ページ38
疑問に思ったけど、追求はしないでおく。特に深い意味はない。
「へぇ。てっきりパシられてるのかと」
「美術部、そんな怖い先輩いないよ」
口を動かしながら、ゴミを分別されているか確認して大きなゴミ箱へと捨てる。
燃える、燃えない。燃えないゴミは消しカスだらけだった。
ゴミを捨てている今は、晴に背を向けている。
だから笑顔を浮かべる必要はないのに。自然と笑みが溢れていた。
「案外、裏があるかも」
「怖いこと言うなよ」
ゴミ箱の蓋を閉めて振り返ると、笑っている晴と目が合った。
ビックリした。だって、晴がずっと私のことを見ていたような、体勢だったから。
私は、背を向けていたけど。
晴は、私のことを見てくれていた。
……なんで今そうやって思ってしまったのか、分からないけど。
何が私のストッパーを外したのか、分からないけど。
私を。
今だけじゃなくて。
ずっと、私だけを、見てほしいって思った。
あの日から。一緒に遊んだ、あの秋の日から感じてはいた。
でも、この考えに至ったら。私達の関係は終わってしまいそうで。
思考を止めていた。
でも。
私、やっぱり晴のこと凄く好きだ。
晴のこと諦められない。
このまま、素直に引き下がるなんて。引き下がれる訳がない。
大人しく身なんて、引けない。
想いを伝えず、晴と他の人が幸せになる姿なんて。見たくない。
見るなら__行動してからじゃないと、嫌だ。
逃げるようにゴミ捨て場から離れて、部室ではなく、麻奈ちゃんの待つ玄関へと足を運ぶ。
今すぐに言いたくて。
ゴミ袋を片手に持ったまま、玄関の扉を開ける。
廊下よりも冷えた空気が広がっていた。
驚いている麻奈ちゃんの言葉に被せるよう、真っ直ぐに言う。
「麻奈ちゃん。
私、告白するよ。晴に」
麻奈ちゃんは目を見開いた。
けれど、すぐにその目は細くなり、優しげな瞳へと変化する。
「うん。頑張れ」
_ _ _ _
「……やっと言う気になった、かぁ」
閉めきられた部屋のなかで、冷たい空気が震える。
そこにいるのは、確かに先程告白を決心した彼女の友人で。
頼りない薄暗い電灯が、その友人の笑顔を照らしていた。
「どう考えても両想いだよ、アンタ達」
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フルーツちょこ(プロフ) - コノハ【心葉】さん» ありがとうございます。本日全話修正をして誤字脱字や、文章の訂正をしましたので、もう一度読んでくださると嬉しいです。 (2018年11月30日 19時) (レス) id: fddb009284 (このIDを非表示/違反報告)
コノハ【心葉】 - 楽しみです! (2018年11月30日 18時) (レス) id: 17d56b6dae (このIDを非表示/違反報告)
フルーツちょこ(プロフ) - 水瀬さん» 楽しみと言っていただけてありがとうございます。私も更新頑張りますので、これからの物語もどうぞお楽しみに下さい。 (2018年10月23日 15時) (レス) id: fddb009284 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬(プロフ) - お話とても面白いです!続きもすごく楽しみになりました!更新頑張ってくださいね! (2018年10月20日 16時) (レス) id: db4b643399 (このIDを非表示/違反報告)
フルーツちょこ(プロフ) - 抹茶モナカさん» 応援のメッセージありがとうございます。最近学業が忙しいため、更新をあまり出来ていませんが、近いうちにもう一話更新したいと思います。コメントありがとうございました。 (2018年10月12日 15時) (レス) id: fddb009284 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みくるみちょこ | 作成日時:2018年6月3日 20時