八十二皿目 ページ33
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『うわぁあ…!!!!』
すごいすごい!!とはしゃぐAに、連れてきて良かったと微笑んだ。
ポアロから車を走らせて40分。少し遠いが公安の仕事
の帰り道に見つけた場所。見つけたのは随分前だけど。
この時間帯になると夕日がとても綺麗に見えるのだ。
「気に入りましたか?」
『うん!街も夕陽色に照らされてきれー…!
こんな場所あったんだね!透くんって何でも知ってるなぁ…』
「ふふ…実はここ、僕のとっておきの場所なんです。
仕事で少し疲れた時なんかはここで街を見て、
……この景色を守れているんだなって。」
組織でなくても、公安として人から嫌悪されることに手を出すこともある。
違法捜査だって仕事の為なら躊躇無くする。それをすることによって国を守れるなら、僕達がすべきことだと思ってるから。
けれど、本当にこれは僕がすべき事なのか。これで国民を、国を守れているんだろうか。
そんな思いが心にのしかかった時、ここに来る。
この素晴らしい景色を、国を、僕はちゃんと守れているんだと実感する為に。
ここはヒロにさえ教えたことはない。
本当に穴場なんだ。誰にも教えるつもりは無かったが、Aには教えたかった。
偽りだらけの僕でも、何か秘密を彼女と共有したかったのかもしれない。
自嘲した笑みを心の中で零す。
そんな僕に、意志の強さを感じる声が聞こえた。
『守れてるよ。』
「!!」
『貴方はちゃんとこの景色を_国を護れているよ』
夕陽に照らされた彼女の笑顔は、酷く綺麗で
美しくて、眩しくて。
___泣きたくなるくらい暖かった。
『透くんお仕事頑張ってるもん!探偵もバイトも
ちゃんと全部お国のためになるって!』
「え?」
『んぅ?』
驚いた僕に彼女はA変なこと言った?と
首を傾げている。それを適当に誤魔化した。
そうか、そうだよな。Aは降谷零を知らないんだから、公安としての僕を知るわけないんだよな。
もしかしたら、なんて思ってしまった。
そうなったら何故その事を知っているのか吐かせなくてはいけなくなるのに。
_Aに知っておいてほしかった。
なんて甘い考えが出てきてしまうんだ。
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作者名:瑠璃 | 作成日時:2022年2月28日 21時