ホンモノ ページ6
まってまってまって。
これは夢？
夢だとは思いたくないけど
きっと夢なんだと思う
「あのー…」
だって普通に考えてあり得ない
目の前にあの石川祐希がいるなんて。
「…っあ、すみません」
368円になります、って伝えると
最初に500円玉を出して
あと8円出しますって言われて
1円玉8枚を出すみたいだったから
商品を袋に詰める間に色々考えた。
オレンジジュースとどら焼き。
え、やっぱり夢なの？なんなの。
あの石川祐希の好きなものと
ぜんぶ重なりすぎて。
「508円お預かりします」
500円玉と1円玉8枚を預かって
140円をかえした。
「ありがとうございましたー」
やっぱり考えてみたけどきっと違う人
こんなコンビニに普通に居るわけないしね。
でも、その場から動こうとしない彼。
「俺のこと、知ってるんですか？」
そう聞かれた時にはもう確信した。
あ、石川祐希だ
石川祐希が目の前にいる
「えっ、あ…夢ですか」
頭の中がこんがらがって
自分でも何が言いたいのかわからない
めっちゃすきですとか
応援してますとか
伝えたいことはたくさんあるのに
いざ目の前にすると何も言葉が出てこなくて。
「え？」
遠くからでしか見たことなかった
あの可愛らしい顔で笑われて、
「夢じゃないですよ」
ちょっとからかい気味に言われて、
「…あの、すごい知ってます」
振り絞って出た言葉がこれだった
「それはありがとうございます」
小さく頭をぺこって下げる石川祐希に
めちゃくちゃキュンとしつつ
石川祐希と喋ってるこの時間が
まだ現実なのか分からないままでいた。
「あ、そうだ」
石川祐希が何かを言いかけたところで
他の人が来店したことを知らせる音
「い、いらっしゃいませー」
一応仕事はちゃんとこなしておいた。
すると石川祐希はもう一度
軽く頭を下げて去って行こうとする。
「Aさん、今度の試合観に来てくださいね」
もう既にチケット取ってますって
言いたいのにそれさえも言えなくて、
ただ去って行く背中を目で追うしかなかった。
ただ気づいたことが１つある
「…てか名前…！？」
そのとき、何かが始まる音がした
なんて、漫画みたいなことを心の中で呟いた。
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 41人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まる | 作成日時：2016年9月25日 10時
