【妖怪学園Y】持つ者、持たざる者・破

陸拾陸【汚れるのは嫌いだ】 ページ20

.

　呼び出された紅葉は、持ち前の明るさで言った。

「ツボミ、大変そうね！」
「えぇ。よろしく、紅葉！」

　チェンジフォームと叫び、変身すると、メリーさんは手を叩いて喜んだ。

「凄い凄い！ 変身までできちゃうんだ！ ますますキミが欲しくなっちゃったよ、ツボミ！」

　人形と風の攻防は、さらに激しさを増した。

　人形の飛ばす糸を扇や風の刃で切り裂き、桜花はついにメリーさんの間合いの内に入った。

「これで……！」

　大風を起こし、メリーさんにダメージを与えようとした桜花であったが、その攻撃はメリーさんの首のマフラーで防がれた。

「そんなに風を起こすのは止めてくれよ。ボクは汚れるのが嫌いなんだ」

　メリーさんはマフラーを腕のように器用に動かすと、攻撃を全て受け流し、桜花を捕まえようとした。

　何とか身を捻って反撃をかわしたが、メリーさんの猛攻は止まる所を知らない。

「ボク、怒ったよ。キミみたいな子にはしつけ(・・・)が必要だね」

　メリーさんは、人形とマフラーで確実に桜花を追い詰めていった。しかし、桜花もただ逃げ回るばかりではない。

　メリーさんの手から人形に向かって伸びた、蜘蛛の糸のようなものを視界に捉えると、それを切れないかと思考を巡らせた。

　そして、次に人形が迫ってきた時、糸が伸びきったところを見計らって、桜花はさっと扇の先を当てた。

　糸はあっさりと繋がりを放棄し、その先の人形は煙と化して消えた。

「コーちゃん！ シンちゃん！ 許さないよ、ボクの大事なお友達を取っちゃうなんて！」

　人形を失ったメリーさんは、理性まで忘れたかのように、ただ真っ直ぐに桜花に向かって走ってきた。こうも動きが単純になってしまえば、最早桜花の敵ではない。

　ひらり、と扇を反すと、メリーさんは花吹雪に呑まれ、そのまま消滅した。



「勝った……」

　変身を解除したツボミは、戦闘の緊迫感から一時解放され、その場にへたり込んだ。

「こんな強い相手、ウチ初めて……」

　紅葉も疲れきった様子でツボミの横に降りると、肩に寄りかかるように座った。

　とても休んでいる場合ではないことは、ツボミも紅葉も重々承知していたが、疲れの方が勝り、すぐには動けない状態であった。

陸拾漆【Yサークルへ】→←陸拾伍【片っ端からやりましょう】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す