02:アアル村の客人 ページ4
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煮込んだトマトとツルツル豆をご飯に掛けたアアルコシャリや、スメールローズを魚肉で包んだランバドフィッシュロールが並ぶ様子は実に豪華で、「Aさんも是非どうぞ」とキャンディスに案内されては食べるしかない。
「でも、どうしてここに……?」
「諸用でな」
言いつつランバドフィッシュロールを頬張る横顔に無理やり納得しつつ、私をそれに手を伸ばす。
「朝にお話していた方ですよ」
「……え…?」
「こちら大マハマトラのセノさんです」
「ええっ!?」
如何にも、と言わんばかりにこちらを向いたセノさん。まさか先程まで七星召喚にて戦っていた方が、あの恐ろしい噂を数多く持っている大マハマトラだったなんて──。
( 向かう先がアアル村だった時点で気がつくべきだったのかもしれない……。 )
仮にも私は国を追われた身で、ここにいてはならないと言われても仕方がない身分ではある。おずおずとセノさんの方を見ると。
「ひとつ、聞いてくれないか」
と言うので頷いて、彼の方へ体を向けた。
「ある集落に年老いた猫が現れた。人々はその猫を珍しがりながらも大層可愛がったそうだ」
「………」
「しかし老いている猫はすぐに病気に掛かってしまい、床に伏した。人々は力を尽くし猫を看病したが長くは生きられなかったそうだ」
なんというか、悲しい話だ……。人々と猫がもう少し長く一緒に過ごせたらよかったのに、と苦しい胸を押さえる。
数秒の沈黙の後、「これで終わりだ」と言うので、思わず「え?」と返してしまった。セノさんは難しい顔をする。
「話を聞いただけでは分からないかもしれないが、これを一言で表すと『猫が寝込む』というダジャレになる」
「………」
「ダジャレを隠し込むという手法を取り入れてみたのだが……面白くなかったか?」
今のってそう言ったジョークだったのか……。面白いか面白くないか以前に解説を聞かないとよく分からなかった……。
取り敢えず「難しかったです…」と素直に答えると、「そうか…」と深刻そうな顔をする。つい心配になってキャンディスの方を見ると、困り笑顔を返された。
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咲原(プロフ) - まるさん» 読んでくださり光栄です。。!ありがとうございます(˶' ᵕ ' ˶)! (8月13日 12時) (レス) id: 2d2082fe5f (このIDを非表示/違反報告)
まる - 最高でした!!お疲れ様です! (8月13日 6時) (レス) @page48 id: 626fa9ab7b (このIDを非表示/違反報告)
咲原(プロフ) - あいうさん» ご覧頂きありがとうございます!元ゲームの雰囲気を壊さずに慎重に書いていましたのでそう言っていただき光栄です……!自分らしく執筆を頑張りますね! (2023年2月21日 16時) (レス) id: 2d2082fe5f (このIDを非表示/違反報告)
あいう - セノの小説あまり無かったのでめっちゃ嬉しいです!話しも自然ですごいです。めっちゃ好きです。自分のペースで更新頑張って下さい!応援してます!! (2023年2月20日 1時) (レス) id: 914ffe60d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲原 | 作成日時:2023年1月19日 12時