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頑なに私を離そうとしないのは、私を離したら彼の尊厳やらプライドが崩れるから。きっと私より顔が赤くなっているに違いない。
( ……崩してみたい。 )
その世界観やら誇り高き尊厳やらを含んだ、彼の障壁を。
「田中くん」
「………」
「キスしたい」
視界の端で動揺したように彼の肩が揺れて、その隙に彼の腕の中から抜け出した。ぽかんと口を開けた彼と目が合うと、すぐに視界を手で覆われてしまう。
まだ、まだ早いぞ…などと唱えている田中くんの手から頬を伝って、その口を引き寄せた。
「──………、」
彼が徹底している冥界の覇王という表面すら剥がして、私にしか見せないような彼を今見せて欲しくて。そんなの、彼が好きな身として失格だろうか。
そうして、今度こそ羞恥心でどうにかなってしまいそうなほどの彼の顔を拝めようとしたのだが。
「……っ、ま…」
私の両頬を持ったと思ったら再度引き寄せられ、あろうことか舌を入れてきたのだ。阻止された、という事実を認めるのはもう何拍か先で。
「…ん、うぁ、っ……」
熱くなったそれが歯列をなぞっては私の涎を救いあげる。
彼が人差し指と中指に嵌めている指輪が触れる頬と、熱を与え続けられる咥内との温度差に脳はキャパオーバー寸前である。
「ま…って、っん、」
抗いたい気持ちはなく、ただ授けられた熱っぽい刺激を処理しきれないのだ。
そうして絡まった悦楽は、喧騒に包まれ始めた周りの雰囲気を悟った瞬間途切れた。降りかかる彼の息が熱い。
「…田中くん」
また顔を背けてられてしまった。まだ彼の素顔を見ることは許されないのだろうか。それでもいいと思えるのは、私を大切にしてくれるだろうと確信しているから。
彼から伸ばされた手に指を絡ませると、温度が急上昇した手から彼の顔すら想像できそうで。
「一緒に帰ろうよ」
真っ赤に染まった耳が丸見えなことは秘密にしておこう。
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咲原(プロフ) - ももかさん» リクエストありがとうございます!申し訳ありませんが、別の短編集にて書かせていただきますね。お手数お掛けします。。! (11月25日 13時) (レス) id: 2d2082fe5f (このIDを非表示/違反報告)
ももか - 夢野秘密子ちゃんと夢主ちゃんが恋愛をしていて...恋人で両ヤンデレのお話が見たいです...!! (11月11日 13時) (レス) id: dc5ce1bb66 (このIDを非表示/違反報告)
咲原(プロフ) - ♡さん» 確認が遅れてしまい、申し訳ありません。大変有難いお言葉です……(;;)!リクエスト了解致しました! (9月27日 20時) (レス) id: 2d2082fe5f (このIDを非表示/違反報告)
♡ - 初コメ失礼します!咲原さんの夢小説めっちゃ好きです!!あの…もしよろしければゴン太くんのやつみたいなキュンキュンする真宮寺くんの夢小説書いてくださりませんか…? (8月20日 1時) (レス) @page27 id: 1e4698083a (このIDを非表示/違反報告)
咲原(プロフ) - オンブルさん» オンブルさんお久しぶりですー!リクエスト了解致しました!気合を入れて甘く仕上げさせていただきますね。。! (8月13日 12時) (レス) id: 2d2082fe5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲原 | 作成日時:2022年12月5日 18時