明日，君のいない世界で。 (ページ20)

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タクシーから転げ落ちるように降りると，目の前の大きな扉へ駆け込んだ。

自動ドアの開くスピードすら遅く感じて。

北「…っあの，！」

受付にはもう人がいないので，たまたま近くにいた人に声をかける。

北「さっき，あの…っ，緊急搬送されたって，！」

気が動転して上手く言葉が続かない。

決して正しいとは思えない説明を，迅速に理解してくれた看護師さんは，俺を救急まで案内してくれた。

それから通されたのは，ジェシーのいる病室。

…，そう。病室。

北「ジェシー，」
ジ「…北斗。」

ベッドにいるジェシーの元へ駆け寄ると，腕いっぱいにこの人を感じたい衝動に駆られる。
それくらい，今までの俺は生きた心地がしなかった。

ジ「ごめんね北斗。心配かけて。」
北「ほんとだよ。」
ジ「…，ほんとだね。」

ねぇジェシー。なんでかな。
不安が治まってくれないんだ。

最近のジェシーの様子も思い出すとさ，なんだか怖くてたまらない。

『大丈夫だよね』。

そんな想いを込めて握った手は，相変わらず柔らかくて暖かいから。それだけで鼻の奥がツンとなる。

北「何も無くて良かった，。」
ジ「……，」
北「ジェシーに何かあったら，」
ジ「…，うん。」

万に一つでも，俺からジェシーを奪われたら何も残らない。

改めて感じたこの人の大きさ。
自分の情けなさを実感する。

あぁ，俺はこの人とだから生きてこれたんだ。

控えめに握り返された手の暖かさに気を取られて，俺は君の沈黙の指す意味にすら気付かなかった。

…俺が君をどれだけ苦しめてたかなんて，これっぽっちも分からなかったんだ。

俺は何も知らないまま，早く寝るようにジェシーに伝えて病室を後にした。

北「じゃあ，明日も来るね。」
ジ「……うん。おやすみ。」

変わらない優しい笑顔に安心して。

俺は，馬鹿みたいに鈍感で，

どうしようもなく薄情だった。