【2j3j】転生しなくても異世界居る件 (ページ4)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:4,581 hit

4.▽野生のドラゴンが現れた！ページ4

「ほら、ドラゴン。本物だ、すごーい」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろこれ確実に。え、は？」

　慌てふためく剣持を横目に、私はただドラゴンをボーッと見つめていた。

　…というより、見つめる以外の行動のしようが無かっただけなんだけど。

　そんな風に立ち尽くしている中、ドラゴンは有無を言わずに近づいてくる。すると剣持が前に出て、私をドラゴンから庇うように両手を真横に広げた。…少し震えていたのは気にしないでおこう。

　前方から飛んでくるのは巨大な禍々しい紫色のウロコが特徴的なドラゴン。バサバサと音を立てて飛ぶその姿を見ていると、自分は何かのアトラクションに乗っているのでは？という錯覚に陥る。

　いよいよ死を覚悟する。お母様、お父様。なんか…いままでありがとう。

　そう雑に感謝をして、私はゆっくり目を閉じた。

　…が、いつまで経っても痛みはおろか衝撃も何も来ない。

　恐る恐る目を開けると、目の前にはドラゴンは居らず、代わりに青空が広がっていた。しかも浮遊感付きで。…ん？おかしくないか？

　これは死後の世界なのか？それならドラゴンが居ないのも、空を飛んでいる感覚なのも説明がつく。

　なるほどな、と一人で納得していたが、その考えは隣から聞こえてくる男子高校生の悲鳴でかき消された。

「うわああ！怖い怖い！速い速い！落ちたらどうすんだこれ！地面見えないけど！？」

「そんな暴れんなって、暴れた方が落ちやすくなるッスよ。捕まっといてください」

「ぐっ…まあ確かにそれもそうだな…」

　思いもよらない声がして、ほぼ反射で隣を向くと、剣持のことをお姫様抱っこして猛スピードで飛ぶ葛葉の姿。その姿を見て、そういやお前吸血鬼か、と思い出す。

　一方お姫様抱っこされている剣持の方はそう納得して、素直に葛葉にしがみついた。

　そうなると、私は今どういう状況なのだ？猛スピードで飛ぶ葛葉と並走していることになるが…これはつまり…

「私、眠っていた力が解放されて飛んでる？」

「ねえ葛葉。Aが頭おかしくなった」

「それは元からだろ」

　は？となりながら声がした方向を向くと、そこには叶の姿。ガチ恋距離の叶とか、叶え隊に殺されないか？

　…待て、同じようにしていた剣持が葛葉にお姫様抱っこされてるということは、私は…

　叶にお姫様抱っこされてる…？

　拝啓、お母様お父様。Aはドラゴンの次は叶え隊に殺されるようです。敬具。