K 10 ページ10
ピンの仕事。
今日はロケだ。
天野さんと話していたら、続々と皆集まり、
打ち合わせの後でロケ開始。
今日はこの辺りを散歩して廻れる場所の特集らしい。
少し田舎なこの辺りは、初めて来た。
地元野菜を使ったランチとか、
高台からの景色とか…
止まることなく収録していき、
残るはこの辺りで有名な神社と
その横の団子屋さん。
「この神社ですが、なんと！
恋愛の神様が祀られているんです！」
恋愛の神様か。
あと少し早く来たかったわ。
「へぇ〜！」
リアクションは取るけど、
正直俺には関係ない。
もう…
遅いんだ。
「北山くん、願っとけ！
誕生日だし、神様も聞いてくれるかもしれないぞ！」
天野さんが笑いながらふる。
「そっすね！
叶えてもらっちゃいましょーか！」
「いやいや、ジャニーズだから！」
多分ここ、テロップで
“収録日は北山くんの誕生日でした”
って、出るんだろうな。
こんなこと考えるなんて
冷めてるな、俺。
皆でお賽銭を入れて願うことに。
皆さんを撮りますので長めでお願いしますと言われ、
終わりの合図が出るのを待つ。
目を閉じて拝む。
…神様か。
本当に恋愛の神様がいるなら、
藤ヶ谷の気持ちが欲しい。
欲しいです。
…違うな。
藤ヶ谷の気持ちは、俺自身のせいで離れたんだ。
だから…
俺、変わりたい。
これからは素直になりたい…
…もう、こんな後悔しなくていいように。
藤ヶ谷の30歳に間に合うように勇気を出していられたら…
6年前の今日、本当の気持ちを伝えていられたなら…。
こんな後悔、しなくていいような自分になりたい。
お願い事じゃ、ないな。
変わるから！
変わるから、今度の恋愛では後悔しない男になれているように、
見ていてください。
もう、失いたくないから。
俺……変わることにします。
今度の恋愛…なんて、
今の俺には考えられないけど。
いつか藤ヶ谷のことを過去に出来たら…
…もしも、過去に出来るなら。
ふわっと、身体が温かいものに包まれた気がした。
それに続いて、トンっと太ももに終了の合図。
あぁ、結局神様に見ていてくださいなんてお願いしてしまった。
「じゃあ、お願い事の後は
美味しいお団子屋さんにいきましょう！」
目を開けると、既に団子に意識がいってる皆がいた。
.
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作者名：咲良
| 作成日時：2017年9月17日 14時
