F 7 ページ7
楽屋を後にして２人でタクシーに乗り込む。
北山がドライバーさんに行き先を告げ、
携帯で居酒屋の予約をしてくれてる。
テキパキしてるなぁ…。
「予約取れた！
よかったよ、空いてて」
すぐ隣りにいる俺に向ける笑顔。
早くなる心臓の音が聞こえてしまいそう。
「ここから近いんだけどさ、
まだ、メンバーと行ったことないんだよね。
藤ヶ谷が初めて」
ニカとも行ったことないとこに連れてってくれるんだ。
「北山はグルメだもんね」
言うと、くしゃっと笑い
「自炊しねぇから」
…じゃあ、俺が作ろうか？
なんて、言えない。
ピアスの彼女には作ってもらわないんだろうか？
いつも会話をしないから話なんてあるのかな？と思ってたけど、北山との会話は途切れることなく続き、タクシーが止まると連れ立って降りた。
「ここ」
夜だから暗くても、北山が微笑むと明るく見える。
神様…
北山が俺を見る度に高鳴る気持ちを隠すには、どうしたらいいですか？
居酒屋と言われ、想像してた場所とは少し違い、高級な印象の店。
北山の後から店内に入ると、通されたのは個室だった。
「はぁ、疲れた」
と座る北山の向かいに腰を下ろす。
「居酒屋っていうか、高級居酒屋みたいだね」
「ここ、個室だからさ、周り気にせず呑めるじゃん？」
個室だから…
北山が近過ぎて…
こんなデートみたいなお礼されたら、気持ちが止まらなくなる。
ただのお礼。
北山は、ただのお礼で誘ってくれただけだから。
大きく息を吸い、落ち着ける。
「藤ヶ谷、何呑む？
呑むだろ？」
「あ…うん」
「適当に頼んでいい？」
「ん、任せる」
「じゃあ…」
と、メニューと睨めっこの北山。
いつも目を逸らしてばかりいるのに、
今は目の前にいる。
一緒に食事だなんて、幸せすぎる。
ピアス、捜してよかった。
今は彼女のことなんて考えないようにしよう。
今を楽しもう！
もうこんな機会、ないだろうから。
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作者名：咲良
| 作成日時：2017年8月11日 1時
