触れていいのは俺だけ

F 32 ページ32

「…きたやま……酔ってるよね？」



「酔ってねーよ。

わかんねぇの？

ずっと好きなんだよ」


…ずっと？


え？


北山が、俺を？


視線を逸らさず、真っ直ぐに俺を見てる。



「わかんないよ、そんな…。

今、頭が廻らない…」


俺が良いように解釈してるだけ？



「……ごめん、忘れて。

悪かった、男なのに」



悲しそうに下がった眉。


俺の上から体を起こすと、手を引いて起こしてくれた。



さっきまで合ってた目は逸らされていて…


「藤ヶ谷。

…悪いけど、帰ってほしい。

おまえのこと好きな男のとこにいるの怖いだろ。


気にせず帰れよ」


と、俯いて言われた。



ねぇ、北山。


…本気で想ってくれてるの？



「…帰らない」



「帰ってくれ。

こんな情けない姿見られたくない」


北山…


そう思うほど、俺のことを？




お酒の力を借りて…


離れて行こうとする北山を、背後から抱きしめた。




「俺も、好きだよ」


ずっと伝えられなかった言葉を口にする。



「藤ヶ谷？」



「ずっと前から、北山のことが好き」


怖くて言えなかったのに…


北山から言ってくれなきゃ、一生伝えることなんて出来なかった。



「嘘だろ？そんなそぶり全く…」


こっちを向こうとする北山をぎゅっと抱きしめる。


今、顔合わせるのは恥ずかしい。



「見せるわけないじゃん、メンバーなのに。

……だから冷たく当たってた、ごめん」



「マジか…」



「北山が本気なら…

……今夜泊めて？

このまま帰るとか、俺浮かれておかしくなりそう」



少し緩んだ腕の力を感じた北山が方向転換して、
俺をぎゅっと抱きしめてくれた。



「今更帰すかよ。

このまま居て」


そう言って体を少し離すと

久々俺に向けてくれる柔らかい笑顔。


こんな表情を向けてくれるなんて…

幸せだ。



「なぁ、藤ヶ谷」


「ん？」


「もう、誰にも触れさせない。

覚悟しとけよ」


ねぇ、北山。


俺だって一緒だよ。


もう北山に触れていいのは、

俺しかいないんだから……！



その思いを込めて、

もう一度北山に抱きついた。







end.


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