好きだと伝える魔法があれば 《前編》

K 25 ページ25

『じゃあさ、北山が食べたい物、作ろうよ！』


「肉！肉っ」


『何それ、また肉？

んー…ハンバーグとか？』


「え…俺、作れるか？」


『大丈夫、俺がいるから』


「超不安なんですけど…」


『北山酷いっ』


「うそうそっ

頼りにしてますよ、藤ヶ谷さん！」


この藤ヶ谷とのテンポのいいやり取りが
最近心地良くてしかたない。


藤ヶ谷を独占してる。


こんな幸せなことがあっていいんだろうか。


「じゃ、材料買って帰ろうぜ。

それと…先に本屋も行く」


『本屋？』


「ん。来週2日オフ出来たから、行くぞ、旅行」


伝えると、びっくりした声で

『え？！マジで？！』

と喜んでくれてる。


「驚いた？」

『北山、全く行動してなかったじゃん！』


「藤ヶ谷を驚かせようと思ってさ、
わかんねーように、やってた。

マネージャーにもオッケー貰って報告済み。

シングル予約してもらったんだけど、
本当にひとりなのかって煩かったわ」


『北山ぁっ

ありがとうっ』

藤ヶ谷が嬉しそうなのが、嬉しい。


「ガイドブック買って帰るから。

藤ヶ谷が行きたいって言ったとこなんだから、
コース考えろよ」


『任せて！

でも、ガイドブックは開けないから、めくってね？』

なんとも可愛いお願いをされてしまった。


「ビール飲みながらめくってやる」


2人で笑い合う。


こんな幸せ、長くは続かないだろう。

今だけ…


この今だけを大切にしたい。





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