好きだと伝える魔法があれば 《前編》

F 16 ページ16

北山の背中を追いかけて病院を出た。


何度か振り返りながら、俺がいるのを確認してくれてる。


「…タクシー乗っても大丈夫？」


『多分』


大丈夫かはわからなかったけど、ダメなら北山は歩いて帰るしかなくなる。


俺がタクシー乗れないなら、飛んで着いていけばいいだけだし。


タクシー乗り場にいたタクシーへと北山が乗り込む。


続いて乗って座ってみると、問題ない。


幽霊が車に乗ってたって話もあるくらいだから、
これは出来るみたい。


それを北山が確認してから、行き先を告げていた。


シートベルトをする北山を見て、
俺も慌ててシートベルトに手を伸ばすけど
勿論透けてしまうだけで…


『出来ない…』


「しなくていいだろ」


『だって…決まりでしょ？』


真面目に言ったのに、ぷはっと笑われた。


「天然炸裂っ」


なんて笑ってる北山を見るのは、本当に久しぶりで…


俺の傍で、こんなに笑って話してくれたことなんてない。


「あの…お客さん？」


運転席から、声をかけられた。


北山は、しまった！って顔をして


「…独り言です、すみません」


なんて謝ってる。


そっか、俺が話しかけてしまうと北山が不審な人だと思われてしまうんだ。


『ごめん、北山』


苦笑いの北山。


携帯に何か入力したみたいで、メモ画面を見せてくれる。


“家、着いたら話そう“


コクンと頷いて、お互い静かに外の景色へと視線を向けた。



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