それが嘘だと気付いたら ３

F 77 ページ26

わたは心配して、家に食事を作りに来てくれるようになった。
 
 
俺の気がまぎれるように話をしてくれたり、
ゲームを持ってきてくれたり …。
 
 
俺が寝るまで傍にいてくれて、泊まってくれてる。
 
 
俺が食べられそうな軽い食事を作ってくれるけど、
 
 
それでも少ししか食べられない。
 
 
 
…でも、渉がいなきゃ俺ってもう限界超えて倒れてるだろうな。
 
 
 
「ちょっと飲んでくるね」
 
 
渡してもらった栄養ドリンクを後手に隠して、楽屋を出た。
 
 
 
しっかりしなきゃ、いけないんだけどな …
 
 
 
どうやったら忘れることが出来るんだろう。
 
 
 
自販機横にあるスペースでひとり栄養ドリンクに口をつける。
 
 
こんなの一気に飲めるはずなのに、体が受け付けない。
 
 
 
 
 
「好きなもんなら飲めるだろ」
 
 
 
会いたくて堪らない声と共に、
目の前にカフェオレの缶が差し出された。
 
 
 
「え …」
 
 
 
カフェオレを差し出しているのは …
 
 
 
「きたやま …」
 
 
 
「ん、これ」
 
 
 
受け取らない俺に押し付けるように渡してくる。
 
 
 
無理矢理渡されて受け取ると、
 
 
 
「最近、痩せたんじゃね？
 
…仕事で減量してんの？
 
無理すんなよ」
 
 
 
ずっと話してなかったのに、どうして今 …
 
 
 
「 …なんで」
 

 
「藤ヶ谷がそれ持って出てくのが見えたからさ…
 
最近、あんま食べてないっぽいし、ちょっと気になって」
 
 
 
俺のこと、気にしてくれたの？
 
 
 
「 …じゃ」
 
 
 
と北山は背を向けた。
 
 
 
行ってしまう…
 
 
 
久々の会話なのに…



でも、止める術がない。
 





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