それが嘘だと気付いたら ３

F 64 ページ13

「ずっと…？

私だって、７年っ」


「10年以上、想っている人です。

…どんだけ想っても手が届かない人ですが、

俺にはその人以外、想えません」


柔らかくて優しい穏やかな表情。



北山をこんな表情にさせる相手が…いるんだ。





これは、嘘じゃない。


演技とは違う、明らかに…。


自分の身体が震え始める。






俺……。






「そんな…手の届かない人なら…」


「…最近、少しずつ気持ちを伝えています。

相手にはどう届いているかわからないけど…


振られるとしても、その人しか考えられない」


振られてでも、想っていたい人…



気持ちを伝えてるの？






…俺は？



俺は…………、そうだった。




俺はただの……


ごっこ遊びの相手だったんだ。







わかってた。


そんなの、ごっこ遊びを始めた時点では理解してたのに。



毎日の中で北山に愛されてる錯覚に陥って、


北山は俺の北山だって…




……………俺…、





…いつからこんなに狂ってたんだろう。






北山にとって俺は…


…想い人の代わりの相手。


ごっこ遊びの相手だったんだ…。



心に穴がポッカリ空いてしまったように

スッと身体が冷めていく。



バカだ、俺。



何をいい気になってたんだ。



北山は俺を見てたわけじゃない。


俺を通して、いつも北山の心の中には想い人が居たんだ。


あの北山は…


俺の北山ではなかったんだ……。






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