【短編集】今始まる物語。【募集企画】 (ページ5)

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ｓｉｄｅ紫苑

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「え、調査？しかも長期？なんで俺が？」

「んなこと俺が知るわけねぇだろ」

本当に不思議でならない

なぜ日本全国に大勢いるはずの中から俺が選ばれたのか

「これは父さんもあんなに怒鳴るわw」

1人笑っていると悠真が真剣な面持ちで問うてきた

「紫苑、行くのか？」

「え？行かないよ、だって俺がいったら悠真が」

「兄ちゃんのことは気にすんな！俺はこれでも社会人だ、自分のことは自分で守れる！それにお前いないなら俺はどっかで部屋でも借りて、しばらくの間家出してやる！」

最期に「金はあるからな！」とドヤ顔して付け足さなければ最高にかっこいい兄だった

「……でも、俺、そんなのやっぱり無理だ」

「紫苑」

「だって、長期ってことは風呂とかどーするんだよ、最初は平気かもしんねーけど、絶対いつかバレる。こんな体…」

「紫苑」

「それに煙草とか酒とか…あれないとなんかダメだけど、政府じゃ絶対に用意してくんないじゃん…！！」

「紫苑！」

「俺がこの家から出たら俺の存在意義がなくなっちゃう…！！」

「紫苑！！！」

「！」

「紫苑、息できてねぇぞ」

忘れていた、息をすることを

急に入ってきた大量の酸素に肺が驚いて咳き込んでしまう

「ゲホッ、ゲホ、ゲホ…ごほっ…！」

悠真が俺の背を摩りながら言う

「お前気を付けろよ、あっちでも」

「ｹﾞﾎｯ…、ゆーま！何俺がアレに行く流れに…！」

「心配なんだよ！！！！」

普段はビビってしまう俺を気づかってか大きな声を出さない悠真が大きな声をだした

「俺はお前が心配だ…！大切なお前が、いつか…母さんみたいに死んじまうんじゃねぇかって…！」

初めて知った、悠真がそんな風に思っていたなんて

「お前が帰って来るのがいつなのかは知らねぇけど、長期なんだろ？だったらその間に俺が親父をどうにかしとく、まぁできるかわかんねぇけどな」

あぁ、ダメだ、こんなの、聞いていないぞ悠真

「まぁ、なんだ、その要はあれだ！お前に長期の間でちょっとしたリフレッシュを…って、紫苑なに泣いてんだよ！？」

「なんだ！？どこか痛むのか！？と、とととりあえず座れ…！」と座布団を床に引いて座ることを促してくる

「…うれしくて、俺、悠真がそんなこと思ってくれてるなんて思わなくて…父さんにお前はサンドバック以上の価値がないって…言われて、俺ってその程度の奴なんだと」

「そんなわけないだろ？お前はずっと、ずーっと俺の大切な弟だ！」