【ツイステ】【リレー小説】足りない高校生達の異世界旅行【本編】 (ページ10)

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霞んだモノクロと桜色【東雲香澄】ページ10

【side:Kasumi Sinonome】

「たっだいま～！」

『おかえりなさい』

私は読んでいた漫画雑誌から顔をあげ、茶の間に入ってきた彼女に言った。

「聞いてよ香澄、今日すっごく大変なことが起こったんだ！」

『へぇ…。あ、ここに桜餅あるので良かったら食べてください』

「ありがとう！…で、それでね…」

桜餅を食べながら楽しそうに話す少女は『天照桜』ちゃん。

言っても信じてくれないとは思いますが………、彼女は、神様なのです。

彼女は、火事で両親と友達を失った私の唯一の支え。でも彼女のことが、私の瞳には白黒にしか映らない。

私の家＿＿神花咲神社＿＿に放火魔が来たあの日から、事件のショックで私が見る世界は白黒。精神的な問題で、生える髪の毛まで白くなってしまった。

そんな私の最近の楽しみは、桜ちゃんの話を聞くこと。

人間として一緒に暮らしながらも神様の仕事をしている彼女の話は、どんな漫画よりも面白い。

「今日ね、異世界に異常が見つかったんだよね～…」

『へぇ』

「それでね、その異世界に高校生たちに行ってもらおうと思ってるんだ！」

いつの間に手に取ったのか、さっきまで私が読んでいた漫画雑誌を開きながら桜ちゃんは言う。

彼女の言う異世界に行く高校生たちはちょっと気の毒だ。

「高校生たちの異世界旅行、みたいな感じで、ねっ！」

『異世界旅行、ですか…』

「そっ！でさ、それに香澄も行ってもらおうと思うんだよね」

『はい、分かりました、って………えっ！？』

私は驚いて、思わず桜ちゃんの顔を二度見する。

今、私が行く……って言いましたよね…？

『桜ちゃん冗談は……』

「冗談じゃないよ。あっ、この漫画ラスボス戦まで行ったんだぁ」

『そうなんですよ！…ってそうじゃなくて！』

「香澄お願い！」

…でもよくよく考えたら、ここで行かなかったら桜ちゃんと暫く離れるってことですよね…。

それは、嫌だ。

『…分かりました、行きます』

「おっ、ありがとう香澄～！じゃあ早速行こっか！」

桜ちゃんがそう言うので、私は『少し出掛けて来ます』と書き置きをして、彼女に頷いてみせた。