４９ ページ1
.
……………は？
今、この人、なんて言った？
"どっち"の仕事？
私は一瞬で脳をフル回転させた。
考えられる可能性は三つ。
何処かで私の情報を得た…
つまり私の本当の目的を知っているか、
そこまで辿り着いていないが探る為に鎌をかけたか、
全く関係のない事かだ。
まぁ三つ目は彼の目から見て無いと捉えて間違いないと思うけど。
『どっちとは、一体何の話でしょうか？』
勿論私はこの程度で
動揺を相手に見せる様な素振りはしない。
何年この仕事をやってきたと思ってる。天パメガネ。
なんて心の中で言ってやった。
すると彼はクスリと笑った。
「わかんない？」
彼の目はしっかりと私を捕らえたまま、動かない。
その視線に何となくだけど、私の正体を知られているような気がした。
『わかりませんね。』
正直白を切っても無駄だということはわかっている。
だけれどここは、我慢。
相手が手の内を明かさない以上、此方から突っ込むことはしない方がいい。
「ま、いっか」
『何なんですか一体』
「いやだってさー。
君がどういう人間であれ本当の目的が何であれ、俺には関係ない事じゃん？」
『はぁ、』
「まぁ、
この先"アイツら"に危害が出るようなら話は別だけどね」
『………』
…そうだ。
余りにも苦手意識が強いせいで忘れていたが
この人…きりやん様も、5人の幹部の内の一人だ。
『…そんなことある訳ないですよ。』
保証はどこにもない。
依頼主が頼むものなんて、私にだってわからない。
『私はこの国を守る為にいるんですから』
だから私は、こうやって嘘を重ねていく。
本当の事など言えやしない。
これは規則。ルールなのだから。
私の言葉に彼はふーんと、片手にあるワインを口に運ぶ。
その動作は誰よりも様になっていて、思わず見入ってしまった。
「…なに？そんなに見て。
もしかして俺のこと好きになっちゃった？」
『あり得ません。気持ち悪い事言わないで下さい』
「あー、そんな言い方しちゃうんだ？」
『本当のことを言っただけですが』
「じゃあ俺はおっきな声で君の秘密バラしちゃおうかなー」
『……………すみませんでした』
「はは、Aは可愛いねぇ、」
酔いが回ってきたのか
彼は先程よりもふにゃりとしていて少しばかり熱を帯びた瞳を細めながら私の頭を撫でる。
＿＿＿やっぱり、苦手だ。この人は。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 407人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「WT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
٩( ᐛ )و - 一気読みさせてもらいました！すごい美しい物語で…語彙力が溶かされました()心情の描き方がすごく柔らかくて細かくて心にくるものがありました！この物語に出会って楽しかったです！ (2022年12月23日 17時) (
レス) @page42 id: 9df188f843 (このIDを非表示/違反報告)
ゆー(プロフ) - あずきさん» コメントありがとうございます…！！！わあああ嬉しいです…！！！！これからも頑張ります^^ (2022年9月30日 20時) (レス) id: ad479b9abd (このIDを非表示/違反報告)
あずき - 完結おめでとうございます！！これからも応援させてください~！！⸜🙌🏻⸝ (2022年9月30日 19時) (レス) @page43 id: fed7a00a2d (このIDを非表示/違反報告)
ゆー(プロフ) - せなさん» コメントありがとうございます!めちゃめちゃ嬉しいです‼︎頑張ります^^| (2022年8月6日 2時) (レス) id: ad479b9abd (このIDを非表示/違反報告)
せな(プロフ) - めっちゃくちゃ好きです...。。更新頑張ってください！ (2022年8月2日 1時) (レス) @page15 id: 4799d8c49a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆー | 作成日時：2022年7月23日 17時
