第48話 ページ12
その日の夜、私は約束通りあんずとご飯を食べに来ていた。
最近オープンしたばかりのお洒落な喫茶店で、あんずのおススメのお店。
「へぇ、じゃあtrick starも大変だね〜」
「そう。でも全国ツアーなんて夢にまで見た舞台だし、絶対に成功させたいの」
すごいなぁ、あのトリスタが全国ツアーか。
あの4人を支えてきたあんずは、これまで私が想像する以上の努力や苦労をしてきたんだろうな。
「じゃ、そろそろ帰ろっか」
「うん」
あんずはまだ仕事があると言うし、お早めのお開き。
手持ち無沙汰になった私は、とりあえず街中を歩いて暇を潰す。
まだほんの少し肌寒い空気が私を覆った。
まだ冬物の服を片付けるには時期尚早かな。
「誰かいないかな〜…」
以前はよく、司を誘ってこの辺りのスイーツ巡りをしたものだけれど、今は出来ない。
司は大忙しだもんね。
ぼーっと歩いていると、近くのベンチで集まっている女子高生たちの会話が耳に入った。
「ね、これ見た！？」
「知ってる！knightsの瀬名泉が日本で芸能活動再開ってやつでしょ？」
やっぱり私はダメだなぁ、と思う。
レオと幸せになるって決めたのに、まだ心のどこかで彼を求めてしまう。
女子高生の見つめる先は、近くのビルに貼られたポスター。
前より少し背が伸びたのか、高校時代には無かった大人っぽさがある。
「…会いたい、な」
考えるより先に、口が勝手に動いた。
会えるわけないのに。
いくら日本に戻ってきたからって、私は、もう…。
レオと結婚したんだから。
これ以上見ているのが辛くて、ポスターから目を背け、また歩き出す。
人混みでごった返す中、私は突如何かに引っ張られた。
「きゃっ！？」
「静かにして」
口元を大きな手で覆われて、一瞬呼吸が苦しくなる。
やっと身動きが取れるようになって、私を引っ張った人の顔を確認する。
「…泉先輩」
「はぁ…余計な手間かけさせないでよねぇ」
泉先輩は眼鏡とマスクを取って、ため息混じりにそう言った。
あのポスターで見た、前とは違う泉先輩。
「…余計な手間って、そんなの引っ張られたら普通は驚くじゃん…」
前みたいに、強気な自分に戻りたい。
あの頃はもっと強く言い返せたじゃん。
なのに、どうして…。
「…仕方ないでしょ。たまたま見かけたら…会いたくなったんだから」
「…ばか」
薄暗い、人通りの少ない細い路地裏。
誰の目もないのをいいことに、私は彼の腕の中に飛び込んだ。
抱きしめ返してくれる手が、暖かった。
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Kotathubuton09(プロフ) - 頑張ってください！ (2019年3月1日 21時) (
レス) id: 6611921f0f (このIDを非表示/違反報告)
スカーレット - まなまなさん» ありがとうございます！面白いと言っていただけて、私のやる気に繋がってます！更新頑張ります！ (2019年2月14日 14時) (レス) id: a99c00a32e (このIDを非表示/違反報告)
スカーレット - 美咲さん» ありがとうございます！！頑張って更新します！！ (2019年2月14日 14時) (レス) id: a99c00a32e (このIDを非表示/違反報告)
まなまな - もう、早く次の話が見たくて仕方ないです！面白いので更新頑張ってください！ (2019年2月14日 0時) (レス) id: a79d567116 (このIDを非表示/違反報告)
美咲(プロフ) - このお話、自分の好みドンピシャで毎回更新されるたびに楽しみに読ませていただいてます！応援してますね！！ (2019年2月13日 0時) (レス) id: 2f15307bb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スカーレット＊アルテミス | 作成日時：2018年10月20日 19時
