ねぇ、愛されヒロインさん。【歌い手】

お酒は一人で ページ15

それから、飾り付けやらの準備をした。

まぁ、特に目立ったことも無かったので割愛させてもらう。

強いて言えば、光との差をさらに痛感したくらいだ。

ここの人は優しいから。


"もしかしたら"


なんて、淡い期待を抱いていた。

でもそんなことは無かった。


もしかしたら。

もしかしたら、平等に扱ってくれるかもしれない、だなんて。



ただの妄想に過ぎなかったみたいだ。








ま「えーっと、この度はシェアハウスを開かせていただき―――――そらるさんお願いします！！！」

そ「お、俺！？えっと、取り敢えず……。これから、シェアハウス開始記念パーティーを開催します！
乾杯っ！」


「「「「かんぱーい！！！」」」


そらるさんの音頭で、皆それぞれ手に持っていたジョッキを上へと掲げる。

カチン、カチンと涼やかな音があちこちでなった。

その音を合図としたように、皆ワイワイと騒ぎ出す。


…こういう雰囲気は苦手だ。

馴染めない。

何をしていいか分からなくて、手持ち無沙汰になっている内に、グループが出来上がってしまう。

その中で、独り。



でも、今回は幸い、棗が居る。

96「Aー！飲もうぜ！おう！」

『え、ちょ、待って。ねぇ、もう酔ってない！？顔赤いんだけど！』

96「そんなわけないじゃーん！これからだよ〜？？うおー！」


片手に握られたジョッキはには、元々注がれていたと思われる量の3分の1しか残っていない。

その小さな頬も、多少赤みを帯びている。


『ちょ、最初から飛ばしすぎでしょ……』


みんなで飲む、というのはあまり好きではない。

酔ってしまったら、本音が零れてしまいそうだから。


まぁ、お酒は好きだよ。

その時だけは、全部、忘れられるから。

光のこと、忘れられるから。


痛いこと、苦しいこと、辛いこと。

忘れられるから。


どれだけ忘れたって、どんどん記憶が追加されちゃあ仕方がないけど。


96「ねーえー、飲まないのぉー？飲もーよー！」

『えぇ……。ん…少しだけなら、いいかな…？』


ジョッキに注がれたビールをぐっ、と口に含む。


結局、棗の誘いに乗ってしまった……

96「もっと行けぇ！男ならぐびっと！ほらぁ！」

『私男じゃない……！』


まぁ、似たようなものかも知れないけどさ。

もう一口、もう一口と飲む。

静かにしてほしい、との気持ちもあったが、酒にかなり弱い私が飲んではダメだったようだ。


頭がふわふわとする。

空を飛んでいるかのようで、心地良い。

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