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人は焦ると周りが見えなくなる
今ほどこの言葉を実感したことはない。
泥棒が入った後のように荒らされた部屋を出て、行く宛もなく廊下を走る。
この建物は無駄に変な形をしていて角が多いから、曲がる時にはぶつからないよう気をつけなくちゃいけない。
だから死角の先に人がいないか、いつも注意してたけど
「ぅわっ！」
『ごめ、』
今は、そんなこと意識してる余裕がなかった……
立ち止まると視界が滲んで、涙がこぼれないように唇を噛んだ。
『ごめ、蜂楽くん……』
彼の横を走り去ろうとした腕を掴まれる。
「どうしたの……なんかあったの？」
『……、』
話したくても何かが込み上げて上手く声が出せない。
出したところでそれは多分泣き声になってしまう。
でも誰かに助けて欲しくて、縋るように蜂楽くんの顔を見た。
彼は私の泣きそうな顔を見るなりぎょっと目を開く。
「ねぇっ、大丈夫？」
『……っ』
「なんで泣いてんの……？」
『………て』
「え？なに？」
『たすけて……っ』
泣くのを我慢してたから胸が酷く上下していて、その四文字を言っただけで酸素が足りなくなった。
頭では落ち着こうとしても、肺が追いつかない
「助けてって……ど、何があったの？」
『……、』
「……俺には、言えない？」
そういうことじゃないと、首を横に振る。
何度か深呼吸したら、段々と落ち着いて正常な呼吸ができるようになった。
『て、手帳が……手帳が、なくなったの』
「……はぇ？」
なんだそんなとこと、ときっと思われてる
でも私にとってそれはただの手帳じゃない
この世でたった一枚の写真、お母さんとの写真が入っている
お母さんの顔を思い出すにはそれしかなかった。
だからいつも持ち歩いて、辛い時には写真を見て励まされてたのに
なんで、そんな大事なものを持ち歩いてしまったんだろう
あれがなくなったら私は、もうお母さんを思い出すことは出来ないのに……
蜂楽くんは肩を震わす私を落ち着かせようと、遠慮がちに手を添える。
「と、とりあえず落ち着いて……えっと、手帳だよね？」
『うん……』
「わかった、一緒に探そう。だから泣かないで」
そしてもう片方の手で、頬に伝う涙を拭ってくれた。
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ごりらに憧れてます - ちょっと控えめに言って神です。語彙力めちゃ高ですし……小説家なれると思います。応援してます！！最高でした〜 (1月19日 7時) (
レス) @page43 id: 930e13de40 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - 話の構成が上手すぎて引き込まれました…！神作品を有難う御座います！ (10月10日 13時) (レス) @page22 id: 96c5df6fb7 (このIDを非表示/違反報告)
時雨、ときどき猫。 - 私、最後の「彼との幸せな〜」を呼んだ瞬間、大泣きしました。枕に顔うずめてたら親に笑われました（笑）本当に心が温かくなる話でした！これからも投稿頑張ってくださいね！ (6月5日 21時) (レス) @page49 id: 5c49e2991a (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - すっごい泣きまた！本当に素晴らしい作品をありがとうございます！ (5月21日 0時) (レス) @page49 id: e67944ae95 (このIDを非表示/違反報告)
ﾋﾗｺ - 素敵なお話をありがとうございました。ツナさんの暖かい気持ちに感動しました。生きることは決して楽しいこと、美しいことばかりではないけれども、それらはいつか糧となり実を結ぶのだと思います。私もいつか生きていて良かったと思える日が来るよう今を生きます。 (2023年4月2日 2時) (レス) @page49 id: 488b484064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ツナ
| 作成日時：2023年1月28日 16時
