第七話 ページ9
急に顔を引っ張られた衝撃に驚いて飛び起きる。まだ夢と現実が曖昧で混乱していると、目の前にいるむいくんが目に入った。嬉しくて頬が緩んでいく。
『むいくん！おかえりなさい！』
「……寝てた癖に」
『あ…いや、が、頑張って起きてたんだよ？』
言い訳の言葉を考えていると、ふと、むいくんの服についている赤黒い染みに目が止まった。
『…むいくん…血…。怪我してるの…？』
「ああ……これ…？」
むいくんの腕からは血が出ていた。怪我してる。それに気付いてむいくんに問いかけるが、当の本人は何でもないようにそれを見る。
「別にこれぐらい…」
『ダメだよ！！』
私は思わず叫んで、むいくんの腕に飛び付く。まだ傷口からは血が出てきていた。菌が入ったら大変だ。
『私…手当てする！』
「は…？いやいいって……」
むいくんは私の顔を見て少し目を見開く。そして、小さく息を吐いた。
「…分かった」
傷口はどうやらそこまで深くはないようだった。その事に安心した後、薬を塗り、包帯を巻いていく。
『痛い…？』
「……平気」
むいくんからすれば、擦り傷程度なのかもしれない。それとも、怪我をするのを慣れているからだろうか。
ズキリと胸が痛んだ。
鬼殺隊。しかも柱だ。沢山戦うのだから、怪我なんてしない方がおかしい。だけど…それが当たり前なのが、やっぱり悲しかった。
俯いて包帯を巻いていると、いきなり頬を抓られる。
『い、いひゃい！』
何でまた！？意外と痛いんだからね！！
「辛気臭い顔してるから」
むいくんは呆れた様子で私を見つめる。
「Aは馬鹿みたいに明るいのが取り柄なんだから。いつもみたいにヘラヘラ笑ってなよ」
私は驚いてむいくんを見返す。
『む…むいく…。いま、Aって』
何気に名前を呼ばれるのは初めてだ。ドキドキと胸が高まるのが分かる。
「…嫌なら呼ばないけど」
『い、嫌じゃ無い！！嬉しい！！』
食い気味にそう叫べば、むいくんは横を向き、あっそ、と呟く。
むいくんに呼ばれただけで、自分の名前が何故か特別な物に感じてしまうのだ。
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uru(プロフ) - 愛NAさん» ありがとうございます！自分ではまだまだと思っているのですが、そう言って下さり嬉しいです！！これからも頑張ります！ (2020年8月18日 19時) (
レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
愛NA(プロフ) - 小説の書き方上手過ぎませんか…？？ちょっとシリアスだったり面白かったり、何かもう色々と凄って思いました。陰ながら応援させて頂きますね…！ (2020年8月18日 18時) (レス) id: d66500f3cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：憂流 | 作成日時：2020年8月2日 15時
