第四話 ページ6
『つ……疲れた』
雑巾を握り締めたまま廊下に座り込む。慣れない着物で動いたのもあるが、想像以上にこの屋敷は広い。というより広すぎる。
でも…この屋敷にはほとんど人がいない。賑やかな声もなく、静かな空気が流れている。
むいくんは、ずっとこんな環境で過ごしていたのか。
『…何か…寂しいな』
「何してんの、そんな所で」
いきなり声をかけられ、思わず後ずさる。そこには汗だくになったむいくんがいた。その手には刀らしきものが握られている。
『修業…してたの?』
「見れば分かるでしょ」
幾らむいくんが2ヶ月で柱になった位強いといっても、それはたくさん努力した結果。そしてそれは今も。
『お疲れ様、むいくん』
笑いかける私をいつものぼんやりとした目で見る。そして、そのまま何も言わず私のそばをすり抜け立ち去った。
むいくんが私に興味がないのは分かってるけど。推しキャラに冷たくされるのは辛いや。
胸の痛みを振り払うように、私は立ち上がった。
『(でも、関係ない。私はいつも通りむいくんに接するだけだ!)』
1週間後。
『むいくん、おはよう!私は高梨A!訳あって居候してる者で…』
「もう分かったから…」
私の日課となった挨拶に面倒くさそうに答えるむいくん。
「言わなくても覚えてる」
『えっ!?でも…』
むいくんは新しい事を覚えておけないんじゃ…
「毎日言われたら忘れ様にも忘れない。アンタは変な奴だしね」
『変なっ…!?』
むいくんは特に気にする様子も無く、廊下を歩いて行く。
私は手を自分の頬に添える。そこは熱を帯びていて熱かった。
『…やば…』
むいくん、私馬鹿だから調子乗っちゃうよ?
少しはむいくんに近付けたって思っていい?
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uru(プロフ) - 愛NAさん» ありがとうございます!自分ではまだまだと思っているのですが、そう言って下さり嬉しいです!!これからも頑張ります! (2020年8月18日 19時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
愛NA(プロフ) - 小説の書き方上手過ぎませんか…??ちょっとシリアスだったり面白かったり、何かもう色々と凄って思いました。陰ながら応援させて頂きますね…! (2020年8月18日 18時) (レス) id: d66500f3cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:憂流 | 作成日時:2020年8月2日 15時