第四十七話 ページ49
腕から血を流す不死川さんを凝視する。血の臭いに酔いそうだった。息が荒くなり、身体が渇きを訴える。
欲しい。血肉が欲しい。
駄目、絶対に駄目。
喰べたい。
人を襲っちゃ駄目…。
2つの思いがせめぎ合う。ただひたすら辛かった。
『は…っ…』
何とか衝動を抑えようと、胸の辺りで手を握り締める。
──────人を喰べたい。
もう無理だ。楽になりたい。そう思って立ち上がろうとした時…
「…っ…A…!」
むいくんの声が私を引き止めた。
''AはA。鬼になっても変わらない''
''好きだよ、A''
''Aには何もさせない''
人は、喰べてはいけない。守るべき、愛するべき存在。
目から涙が溢れる。さっきまでの渇きが、一気に引いていく。涙を拭わないまま、私はゆっくりとお館様の方を向いた。
『ひ、人、は…襲わ、なぃ…』
辿々しい言葉で、だけどはっきりと、私は声に出して伝えた。
「…どうなったかな?」
「竈門禰豆子同様、血塗れの腕を差し出されても我慢しました」
「証明、出来たみたいだね」
お館様は柔らかな笑みを浮かべる。瞬間、張り詰めていた糸が切れてその場に座り込む。まだ息が荒く、ふらふらした。
「A!」
『むぃ…く…』
むいくんが私の側に急いで来て背中を支えてくれる。
そんな私達を見て、不死川さんはどこか悔し気に舌打ちをした。他の柱達も驚き、困惑を浮かべる人がいれば、ただジッと私達を見つめる人もいた。
「無一郎」
そんな中、凛とした声が響く。
「もしAが人を襲ったら、どうする?」
お館様の質問にむいくんは背筋を伸ばす。
「…その時は…僕がAの頸を刎ねます。そして責任を取って…僕自身の命も差し出すつもりです」
むいくんの宣言に、私は涙を流す事しか出来なかった。
167人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
uru(プロフ) - 愛NAさん» ありがとうございます!自分ではまだまだと思っているのですが、そう言って下さり嬉しいです!!これからも頑張ります! (2020年8月18日 19時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
愛NA(プロフ) - 小説の書き方上手過ぎませんか…??ちょっとシリアスだったり面白かったり、何かもう色々と凄って思いました。陰ながら応援させて頂きますね…! (2020年8月18日 18時) (レス) id: d66500f3cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:憂流 | 作成日時:2020年8月2日 15時