第四十三話 ページ45
『……ぅ…』
目を薄ら開けると天井が見えた。体を起こして周り話をよく見れば、見覚えのある場所だと気付く。むいくんの屋敷だ。
全部夢だったのか。そう思って自分の手を見ると、普通の人とは違う鋭い爪があった。
…夢じゃない。私は鬼になったんだ。
泣きそうになった時、障子が開けられ、むいくんが入って来た。私に気付き目を見開く。
「A…」
私の側に来て膝をつく。私は決まりが悪くて下を向いた。
「3日間眠り続けてたんだよ。体は?大丈夫?」
何で普通に接してくれるのか分からなかった。
『…わ、わた、し…は、鬼…だ、よ』
言葉が上手く出て来ない。鬼になったせいかな。意識が保て、話せるだけまだマシだろうけど。
「分かってる」
『な、んで…』
「何で殺さないのかって言いたいわけ?」
その言葉に私は小さく頷く。横から溜息が聞こえた。
「AはA。鬼になっても変わらない」
真っ直ぐに目を見て言った後、横に逸らす。姿勢を崩し、再度私を見る。
「前の僕なら思わなかった。Aがいたから、Aだからこう思うんだよ」
駄目だよ。今は意識があるけど、暴走しないとは限らない。私は禰豆子ちゃんと違って、人を喰べない保証なんてどこにも無いから。
だけど…。
むいくんが私自身を見てくれるのが堪らなく嬉しい。
──────殺さないで。
その言葉をなんとか飲み込む。
『…むぃ、く…』
そっと腕を引かれて、むいくんに抱きしめられる。その温かさに、私はまた泣きそうになった。
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uru(プロフ) - 愛NAさん» ありがとうございます!自分ではまだまだと思っているのですが、そう言って下さり嬉しいです!!これからも頑張ります! (2020年8月18日 19時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
愛NA(プロフ) - 小説の書き方上手過ぎませんか…??ちょっとシリアスだったり面白かったり、何かもう色々と凄って思いました。陰ながら応援させて頂きますね…! (2020年8月18日 18時) (レス) id: d66500f3cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:憂流 | 作成日時:2020年8月2日 15時