第四十二話 ページ44
焦点の定まらなかったAの目から涙がボロボロと零れる。
「〜っ…」
涙を流しながら僕に攻撃をする姿は、見ていて痛々しかった。
それでも…確信した事…。
──────Aはまだ正気に戻れる…!
鬼殺隊、しかも柱の地位にいて、鬼を殺さないなんて言語道断であろう。
だけど…僕はAを…。
「A…ごめん…。1人にさせて…」
攻撃を躱しながら、彼女に語りかける。
「護るって言ったのに、鬼になんかにさせてごめん」
そこでわざと隙を作る。それに反応したAは懐へと飛び込んで来た。
ギリギリで避けたが、脇腹を掠める。鈍く走った痛みを気にせず僕はAを抱きしめた。
『ーっゔぅぁ…!が…ぁ…!』
Aは腕の中で暴れ、背中に爪を立てる。げほっと息を吐き出し、逃げない様にまた強く抱きしめた。
「もう…絶対に離さない。こんなに想わせておいて離れるのは許さないから。だから、A…戻って来て。
また隣で笑ってよ……A…」
一瞬びくりと反応したA。それから背中から手を離す。
『……む…い、く……ん…』
僕は目を見開く。掠れた声で確かに僕の名前を呼んだ。…話せるのか…?
「A…?」
顔を覗き込みと、ほんの少し光が差した目が見つめ返す。しかし、だんだんと瞼が下がり、遂には体が傾き僕の方へもたれかかった。
暫くして、すぅすぅという寝息が聞こえてきた。それに酷く安堵する。
「時透…さん…。大丈夫です…か?」
控えめに声をかけて来た隊員が僕の体を見てから、Aに視線を向けた。
傷と、それから鬼なのに殺さなくて良いのか。大方そんな心配だろう。
「お館様への報告は僕がする。気にしなくて良いから」
「は、はい…」
眠っているAを起こさないようにゆっくりと抱き上げる。その体は想像以上に軽かった。
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uru(プロフ) - 愛NAさん» ありがとうございます!自分ではまだまだと思っているのですが、そう言って下さり嬉しいです!!これからも頑張ります! (2020年8月18日 19時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
愛NA(プロフ) - 小説の書き方上手過ぎませんか…??ちょっとシリアスだったり面白かったり、何かもう色々と凄って思いました。陰ながら応援させて頂きますね…! (2020年8月18日 18時) (レス) id: d66500f3cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:憂流 | 作成日時:2020年8月2日 15時