第二十一話 ページ23
「…そう。残念だけど仕方ないね。話したかっただけだから、もう下がって良いよ」
『はい』
私は立ち上がり、障子に手を掛ける。そのタイミングで、名前を呼ばれた。
「Aが敵では無い事は分かっている。だから、少しは言葉にした方が良い。君のいた場所、その他の事を」
私は振り向いてお館様を見つめる。私の姿なんて見えていないだろうに、全てを見透かされそうだ。変わらない表情が、全部知っていると私に伝えているようだった。
『…心に…留めておきます』
ドクドクとなる心臓を落ち着けながら、私は返事をして今度こそ部屋を出る。
私がこの世界の人間じゃないとは思わないだろうけど…。曖昧な事ばかり言っているから怪しいに決まっているよね。
屋敷を出れば、1人の少年が佇んでいるのが見えた。
『むいくん…!』
名前を呼べば彼はすぐにこちらを向いた。私はむいくんの元へ急いで駆け寄る。
『待っててくれたんだ』
むいくんは私の顔を見た後、その視線を私の腕へとずらす。
「……怪我は…」
『あ、手当てして貰ったから全然大丈夫!』
笑って伝えるが、むいくんの顔はどこか怒っているように見える。
「…馬鹿でしょ。考え無しに飛び出て腕を切って。稀血なのに…下手すればあの鬼に傷付けられたかもしれない」
『……でも、禰豆子ちゃんは人を喰べないし』
「そんなの分からない」
…分かるもん。その理由は言えないけど。
『結果的に私は無事だったからもういいよ』
だけど、むいくんは納得するどころかもっと顔を険しくする。
「…僕の小さな怪我は大袈裟に心配した癖に」
『それは…!むいくんが怪我するのが嫌だから…』
「…同じだよ」
え?と首を傾げる私の手をそっと取るむいくん。ドキッと胸が大きく脈打った。
「Aに、勝手に怪我して死なれるのは…嫌な気分なんだよ」
そして私の腕を引いて歩き出す。怪我をしていない方の手、という事に彼の気遣いを感じた。
前にいるから顔は見えないけど、それで良かったのかもしれない。多分、今の私の顔は真っ赤だろう。
『(あ〜…やばい)』
むいくんへの想いが募りすぎて、溢れてしまいそうだ。
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uru(プロフ) - 愛NAさん» ありがとうございます!自分ではまだまだと思っているのですが、そう言って下さり嬉しいです!!これからも頑張ります! (2020年8月18日 19時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
愛NA(プロフ) - 小説の書き方上手過ぎませんか…??ちょっとシリアスだったり面白かったり、何かもう色々と凄って思いました。陰ながら応援させて頂きますね…! (2020年8月18日 18時) (レス) id: d66500f3cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:憂流 | 作成日時:2020年8月2日 15時