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第十一話 ページ13

雨は嫌いだ。



怖くて震える事しか出来ない。



何もかも流してしまうから。





むいくんが出て行ってから数十分。むいくんはまだ帰って来ないし、遂には雨まで激しく降り始めた。そもそもどうしたというのか。私の話に何かおかしい所はなかった…と思う。

『むいくん…』

私は震える体を抱きしめる。

雨だけは無理なのだ。雨の日に1人でいるのは…どうしても。小さい頃の記憶が頭を過ぎって、ヒュッと喉が鳴った。

そして私はいつの間にか、無意識のうちに外に飛び出していた。傘も差さずにただ走る私を、変な人だと見る視線。だけど、そんな視線も、雨に濡れる事も気にしない程、今の私は切羽詰まっていたのだ。


私らしくない…だけど…。


走っているとぬかるんだ地面に足を取られ、思い切り転んでしまう。

……痛い。痛くて、悲しくて、寂しくて。泣きたくなる。


「……A…?」


その声に顔を上げれば、傘をさしたむいくんが驚いた顔で此方を見ていた。

『むい…くん…』

「何でこんな所に…傘もささないで、風邪引きたいわけ?」

怒った様子で側に来てしゃがみ、私の顔を覗き込む。

「……どうしたの…」

泣きたくないのに…そんな優しい声で話しかけないでよ。我慢…出来ないじゃん。


私はむいくんに抱きついた。その衝撃でむいくんの手から傘が離れ、私達に雨が降り注ぐ。


ザァザァと降る雨は、私の涙と泣き声を消し去ってくれる。


私を怒ったり突き放したりせず、グシャグシャの頭を撫でてくれるむいくん。




家の中で1人、震える少女。



雨が降る中、地面に倒れた女の人。



これは記憶だ。私の…思い出したくない昔の記憶。

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uru(プロフ) - 愛NAさん» ありがとうございます!自分ではまだまだと思っているのですが、そう言って下さり嬉しいです!!これからも頑張ります! (2020年8月18日 19時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
愛NA(プロフ) - 小説の書き方上手過ぎませんか…??ちょっとシリアスだったり面白かったり、何かもう色々と凄って思いました。陰ながら応援させて頂きますね…! (2020年8月18日 18時) (レス) id: d66500f3cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:憂流 | 作成日時:2020年8月2日 15時

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