#6 ページ7
『…センパイ…此奴悪い奴です。センパイが奢ってくれたクレープ、此奴のせいで台無しになりました』
表情は無かった。''無''、それが1番合っている。
『悪い奴には、お仕置きしないとですよね?』
こてん、と首を傾げたAに一瞬だけ恐怖を抱いた。
「…ああ、分かってる。でも、このやり方は違う。離してあげよう」
駄々をこねる子供を諭す様に、優しい口調でAに訴えかける。Aは顔を下に向け、唇を噛む。それから、ゆっくりと手を離した。
「ーッゲホ、っ、ふざけんなよお前ら…」
「彼女が言った通り、ぶつかってきたのは貴方。非は無いとは言わせない。これ以上面倒事を起こしたく無いなら…
さっさと此処から消えろ」
ヒッ、と情けない声を出した。酔いが覚めたのか、男性は捨て台詞を残し走っていく。
溜息を吐きながら、それを見ていると服を引っ張られた。
『……ごめんなさい…』
まるで小さな子供の様だった。
『センパイが…折角買ってくれたのに…』
落ち込んでるAを見ると、先程の事を注意しようにも出来ない。
下を向いているAの頭を優しく撫でると、驚いた様に顔を上げた。
「もう1回買おう」
『…え』
Aは戸惑った様に声を上げ、眉を下げる。
『怒らないの…?本で見た。悪い子はお仕置きされるって。私、悪い子でしょう?』
本で見たって…。そんな事言ってしまえば、全人類仕置きが必要だ。
「怒らないよ。Aは悪い子じゃ無い。寧ろ優しい子だ」
『…………優しい……子…』
小さな声で呟いたAは、薄らとその顔に笑みを浮かべる。それから、良かった、と安心した様に笑った。
『…センパイ』
「うん?」
『お母さんみたいって言われませんか?』
「えっ…!?」
この日が、Aの狂気を初めて目にした瞬間だった。
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憂流(プロフ) - つっきーさん» こちらこそありがとうございます!とても丁寧に、そんな風に言って下さり、本当に嬉しいです…! (2021年8月4日 9時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
つっきー - 訂正…このカプ?が一番好きです (2021年8月3日 23時) (レス) id: eaffa75066 (このIDを非表示/違反報告)
つっきー - もう何年か占ツク読んでんだけど、こんな読み終わった後に満足感と達成感を味わったのは初めてです…。有賀うございました、何気に今まで見た中でこのカプ?が好きです。 (2021年8月3日 23時) (レス) id: eaffa75066 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:憂流 | 作成日時:2021年4月5日 21時