第百四話 ページ7
騒がしい心臓をやっとの事で落ち着ける。
それから、話をしながら2人で並んで夜空を見上げていると
「……ずっと霞がかっていて、思い出せなかったんだけど」
むいくんがふと、そう呟いた。
「刀鍛冶の里に居る時に……思い出した」
『…昔の事…?』
「そう…」
むいくんはポツリ、ポツリと話してくれた。
家族の話。
双子のお兄さんの事。
自分の名前についての事。
私は、むいくんが話終わるまで黙って聞いていた。
『…ありがとう、話してくれて』
「…うん…ごめん、こんな話して。でも…Aには言いたかった」
私はむいくんの方を見る。下ろしている髪が、風でふわふわと揺れた。
少し冷たい風。闇夜に浮かぶ点々とした星。静かな空気。
そんな、どこか物悲しい雰囲気だからだろうか。むいくんが過去を話したからだろうか。
言うつもりの無かったことを、ふと言いたくなった。
『…あのさ、むいくん。私、前にお姉ちゃんが居るって言ったじゃん?』
「……あぁ、うん」
『むいくんが…家族の事話してくれたから…私も、むいくんに言いたくて…』
羽織りをギュッと握り締めた。ドクドクと心臓がうるさいくらい鳴っている。
『…私のお姉ちゃんもね、死んだんだ…。
1年前に、私のせいで…』
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作者名:憂流 | 作成日時:2021年1月31日 10時