境界線。参【時透無一郎】 (ページ45)

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第百四十二話ページ45

無惨はピクリと反応する。

「私が哀れだと？」

その顔には、明らかに怒りが見て取れた。

「そうか、余程死にたいようだ」

一瞬で私の前に来た無惨に手足を斬られる。ドシャッと倒れ込んだ私に無惨は尚も攻撃をする手を止めない。

「なら叶えてやる」

「…A…」

瓦礫に埋もれたむいくんが、苦し気に声を漏らした。

私に向かって、振り落とされる触手。

「…っ、やめろーーっ！！」

瞬間、炎のようなものが視界を横切る。

「ヒノカミ神楽輝輝恩光」

見覚えのある姿が、私の前に降り立った。その姿に安心して涙が出そうになったが、グッと堪える。

『…炭治郎…』

「うん、遅くなってごめん」

炭治郎…炭治郎…。

「A、カナヲと一緒に隠の人の所へ」

『でもっ、』

「俺は大丈夫だから」

炭治郎はそう言ってから、無惨の方へ行ってしまった。

大丈夫…なんて…。顔の右側が、無惨の毒のせいでおかしくなっているのに。

『…炭治郎』

主人公だから。竈門炭治郎は鬼滅の刃の主人公だから、何度だって立ち上がって戦う。きっと仕方ないのだけど。それでも…頼もしい、と感じてしまう自分が情けなくて嫌だ。

『…カナヲちゃん…取り敢えず手当てをして貰って…』

「…Aは？」

『他の…みんなの所に』

どれ位の傷の具合か確かめて、治療してもらわないと。私が、動ける内に。

「…ねぇ、A」

『…なぁに？』

「……大丈夫なの？」

…何が、とはカナヲちゃんは言わなかった。