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第百三十八話 ページ41

みんなは困惑した様子だったが、直ぐに体の変化に気付く。


注射針の中身は、珠世さんが作った薬だ。


「何か知らんが通りすがりの猫に助けられたぜェ!!」


そしてそれは、無惨と私だけが知っている。

「またあの女…珠世の差し金が。私の細胞破壊を止める血清のようなものまで…。

無駄な足掻きをするな!!潔く死ね亡者共!!」

『ーッ!!』

容赦無い攻撃が私達を襲う。


『亡者は…あんたの方でしょ…!!』


本当は死んでいる身の癖に。執念に取り憑かれている癖に。



……でも…私はね…



私は…



**


ー伊黒視点ー


刀を握った事すら無さそうな、あの鬼の女ですら戦えている。
俺が誰よりも戦果を上げていない。もっと有効な攻撃を与える事が出来れば…。

命の危機に瀕した生き物は、爆発的な力を発揮する。

箸よりも重い物を持った事がないような非力な手でも。簪1本で座敷牢の分厚い格子を破る事が出来ると俺は知っている。


共に戦っている時透を横目で見た。


時透、お前は。


白刀を赫くし、刀の色に関わらず刃は赫くする事が出来るのだと証明した。

鴉の報告かは推察するならば、あの瞬間時透が出来た事は強く刀を握り締めるのみ。

強い衝撃を受け、刀の温度が上がったのではないだろうか。


刀を赫く染めるのは、死の淵に己を追い詰めてこそ発揮される



万力の握力。

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作者名:憂流 | 作成日時:2021年1月31日 10時

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