第百三十三話 ページ36
やっと、やっと変わった。
変わったんだ…!!
私はむいくんを強く抱きしめる。まだ夢見心地な気分で、離してしまうと途端にむいくんが消えてしまいそうで怖かった。
「A、大丈夫だよ。大丈夫」
そんな私の気持ちを察してか、むいくんは優しい声で抱きしめ返してくれる。頭に置かれた手がとても温かかった。
『…むいくん』
「何…?」
名前を呼べば返事をしてくれる。それすら、とてつもなく嬉しくて涙が出て来た。
「…泣かないでよ」
むいくんは困った様に眉を下げ、私の涙を親指で拭う。その優しさが余計に私の涙腺を弱くする。
次々と私の目から涙が溢れる度に、むいくんの親指が左右に行ったり来たりを繰り返していた。
「小鳥遊、行かねばならぬ。顔を上げろ」
悲鳴嶼さんの言葉に従い、私は顔を上げる。むいくんも同じ様に顔を上げた。
「無惨を倒すまで…終わりではない」
そうだ。まだ終わりでは無い。ここを変えてもまだ次がある。
無惨を倒さない限り、幸せな未来はやって来ない。私達は終われないのだ。
「もう大丈夫なのか…?」
『大丈夫…!』
尋ねて来た玄弥に返事をする。それから流れ続ける涙を拭って、私は立ち上がった。
「行こう、A」
『うん!!』
大丈夫。むいくんも玄弥も、勿論炭治郎も。みんな居るから。
最後の結末も、きっと変えてみせる。
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作者名:憂流 | 作成日時:2021年1月31日 10時