境界線。参【時透無一郎】 (ページ33)

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第百三十話ページ33

「…やっ…た…？」

息を吐いて地面に座り込む。だけどすぐに顔を上げ、立ち尽くしているAを見る。

「…高梨…？」

Aの様子を疑問に思った玄弥が声を掛けた。

『……』

その声にピクリとAが反応する。ゆっくりと顔を玄弥の方に向け、

口角を上げ笑った。

「ーッ！！」

Aが地面を蹴ったと同時に俺も玄弥の元へ急ぎ、一緒に倒れ込む。玄弥が居た場所は、Aの攻撃により破損していた。

玄弥は何が起きたのか分からず、目を見張っている。

「A…！」

此方を向いたAはあの日、鬼として現れた時に似ていた。

『血鬼術………！！』

血鬼術を使おうとしたが、横から鉄球が来たため不発に終わった。

「時透！」

「悲鳴嶼さん…」

「小鳥遊は…どうした？」

…そんなの、こっちが聞きたい。

「…鬼化が進んでいるな」

「ーッ、」

認めたくない、認めたくないけど。明らかに人間としての理性が無くなっている。

「時透、どうする気だ」

「それは…」

「ここで時間や体力を削っている暇は…ない」

''無一郎、もしAが人を襲ったら。どうする？''

''その時は…僕がAの頸を刎ねます。''

…僕は…

"みんなで戦ってみんなで生きるの"

「…A…」

歯を強く食い縛り、覚悟を決める。自分がすべき事は分かってるけど、でも。

「…少しで良い、時間を下さい」

「時透…！？」