第百十四話 ページ17
「……そうですか。あなたが他の人と違う雰囲気である理由が分かりました」
しのぶさんは私の話を静かに聞いた後、そう言った。
理解しがたい内容をゆっくり、咀嚼するために目を伏せ、暫く黙る。そして口を開いた。
「私は死ぬんですね」
『……はい』
しのぶさんも、自分が死ぬと分かっても表情を変えなかった。
『だから、私も一緒に戦うので自分を犠牲にする作戦は…』
「時透君はどうなるのですか?」
紫色の瞳が真っ直ぐに見つめて来て、動揺してしまう。
『むいくんは……』
言い淀んでいると、しのぶさんがふふっと笑った。
「分かりやすいですね」
『あ、』
「Aさん、本当に大切な人を守る事を優先して下さい」
『っ嫌です!そんな事…』
「遅いのです。既に私の身体は毒に侵されている」
悟ったように微笑むしのぶさんを見て、私は泣きたくなった。
『私、みんなを助けたいんです…。もう何も出来ないのは…煉獄さんの時のようになるのは…』
…絶対に嫌だ。
私を見つめていたしのぶさんは口を開いた。
「いいですか、Aさん。犠牲がなくて済むのなら勿論良いですが、それはどうやっても夢物語。
何をしたって、犠牲は付き物です」
しのぶさんは静かに言葉を紡ぐ。
「だからこそ、どうすればその犠牲が少なくなるのかを考え行動するのです。煉獄さんもきっとそうだったでしょう。
その少ない犠牲が私ならそれで良い。私が犠牲になる事で、誰かが助かるならそれで良い」
どうしてそんな事言うの。
しのぶさんを犠牲にして、誰が喜ぶんだ。カナヲちゃんやアオイちゃん達は?
そんなの優しさじゃない。そんなの……
私がいる意味がない。
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作者名:憂流 | 作成日時:2021年1月31日 10時